『遊ぶ』が勝ち 『ホモ・ルーデンス』で、君も跳べ!|スポーツ本REVIEW

スポーツの根本は遊びである

「遊ぶ」が勝ち 『ホモ・ルーデンス』で、君も跳べ!

為末大(著)中公新書(2013年5月)780円+税 新書・197ページ・カバー付き

著者は、01年と05年の世界陸上、400mハードルで銅メダルを二度獲ったアスリート。ご存知、為末大である。

短距離競技を走るたびに記録が伸びた為末少年は、高校時代に伸び悩みを経験する。400mハードルに出場した国体で、高校新記録・ジュニア日本記録を出すが、「速く走る」価値を追い求める世界と、障害物を上手に飛び越えて記録を競う競技を、同じ価値として受け入れられない。大学に入学してからも心の葛藤は続く。

20代の半ばに『ホモ・ルーデンス』という本を友人に薦められ、海外遠征に出かける際にそれを持っていき、むさぼるように読んだ。同書はスポーツや陸上に関して書かれた本ではない。「遊び」というものを哲学的に考察した本だ。著者のヨハン・ホイジンガはオランダの歴史家なのである。

為末はこの座右の書を糸口に、スポーツにおける「遊び感」の大切さを説いている。スポーツと遊びは似ている。スポーツのおもしろさは遊びに通じている。

体罰が大きな社会問題になっている。為末は説く。「『スポーツの根本は遊びである』と言うと、日本では抵抗感を持つ人が多い。そうした人たちは、スポーツを『身体を使った修練』のようなものとしてとらえている。僕は、そうした考え方が顕著になって出てきたのが、『体罰』なのではないかと思う」。

「スポーツの根本は遊びである」と考えるなら、指導者の指示や強制によってではなく、自分から努力し、鍛錬するというのは当然のこととなる。現役時代、為末はコーチをつけずに通した。まさに「スポーツを遊びとして」実践して見せていたのである。このような為末の競技に対する姿勢から、私は、スポーツをする人にとって「遊び感」が大切であることに気づかされた。(村山正三)

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