オリンピックを殺す日|スポーツ本Review

オリンピックを殺す日
堂場瞬一(著)
文藝春秋(2022年9月)
1,980円(税込) 四六判 368ページ

タイトルからして何やら物騒なストーリーにひかれ一気に読み通しました。2020東京オリンピック・パラリンピックはコロナ禍の中での強行開催ということから、開催前の世論調査では半数を超える反対意見がありました。競技自体は無観客での開催でしたが、日本選手は地の利もあり連日のメダルラッシュに日本中が釘付けになり、メディアも連日日本選手の活躍を報道。大会終了後はまさに手に平返しのごとく、「開催してよかった」と礼賛一色となり評価が正反対となったことはまだ記憶に新しいところです。

しかしながら、その後発覚した大会組織委員会元理事による贈収賄疑獄が発覚したことから、「金にまみれた五輪」という実態が明らかになりました。このような状況から、果たして今後オリンピックは継続して開催できるのか?オリンピックはすでにかってのような崇高な役目は終わったのではないか、という声も聴かれます。

物語は東京オリンピックが終わり、次の大会に向けて取材活動を始めようとした時にオリンピック担当からはずされたスポーツ記者である菅谷 健人(すがや たける)が「世界レベルの大会をオリンピックと同じ時期に開催される噂がある」と聞いた事から始まります。

取材を進めるとどうやらIT企業がバックで動いているものの取材対象者(大会関係者・参加予定選手等)からはことごとく取材拒否にあい、大会名が”The Game”であること以外十分な資料もないまま開催地ギリシャ・アテネに向かう。

そこで見た光景は負けた選手も、勝った選手も「笑顔」という今までのオリンピックでは観たこともない表情の選手の姿が。更に、アテネでの継続開催ということが主催者から発表となる。物語の最後にこの大会を立ち上げた仕掛け人「彼」が明らかになる。そこで菅谷が聞いた事は…。

本来スポーツはどうあるべきなのか?
誰にためにあるのか?
古くて新しいテーマを考えさせる一品といえます。

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