コロナ禍での甲子園に対する高校球児の想い

あの夏の正解
早見 和真 著   
新潮社 2021年3月15日発行


 コロナ禍の中で2020年の全国高等学校野球選手権大会は春・夏とも中止となったことは記憶に新しいところです。
 この本は、2018年、夏の甲子園大会で優勝した愛媛県代表・済(さい)美(び)高校と準優勝した石川県代表・星稜(せいりょう)高校の3年生野球部員と監督に、神奈川県の強豪高校・桐蔭学園野球部員の経験を持つ著者が緊急事態宣言下の2020年5月から8月の3か月にわたって直接両校に赴いてインタビューを行い、「高校球児にとって甲子園大会とは何か?」をとことん追求した傑作です。
 全国高等学校野球選手権大会は戦争で一時中断することはありましたが、ウイルス感染症の影響で中止となることは100年を超える歴史で初めてのことで誰も経験したことが無く、球児も含め高校野球関係者としてどのように対応したらいいのか?悶々とした日々を過ごしていたことが推測されます。恐らく誰も「これが正解だ」という答えを持っている人はいないでしょう。
 この本のタイトルとなる「あの夏の正解」にも今まで経験したことのない状況に直面している球児たちの日々揺れ動く精神状態が克明に記されており、読み進めて行くうち野球に対して今までプレッシャーの中でやってきたが、純粋に野球を楽しみたいという、それまでとは180度違う接し方ができるようになったという球児の野球に対する意識の変化には「甲子園大会」がいかに教育現場に大きな影響を与えていることが伺えます。
 高校野球はひとたび甲子園出場が決まると、地元は言うに及ばず日本中が「おらが国さの学校を応援する」という国民的行事となっています。また、出場する選手は郷土の期待を一身に背負ってギラギラと輝く真夏の太陽の下、白球をひたすら追いかけるという爽やかなイメージがある一方、登板過多による投手の酷使、とにかく勝てれば何をやっても良いという「勝利至上主義」と言える「甲子園病?」がとかく話題となります。
 選抜大会中止により甲子園に行けなくなった球児たちに救済措置として1度きりの甲子園交流大会が提供されますが、その大会に臨む済美・星稜の選手達は何を思うか?両校の対決は思わぬ大差となるが、その大会を経て「この夏の正解」は彼らにとって「あの夏の正解」となる。果たしてどんな夏だったか?正解は一つではない。自分自身で見つけて欲しいという筆者のメッセージがどこまで伝わったか興味が尽きない。

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