スポーツの価値|スポーツ本Review

スポーツの価値
山口香(著)集英社新書 2023年
1,078円(税込)192ページ

スポーツの多様な価値を考える

コロナ渦の真っただ中で強行された2020東京五輪・パラリンピック。開催前の世論調査でも圧倒的多数の声は「延期」ないし「中止」を求めていましたが、日本選手の金メダルラッシュもあり「感動」を受けとったとの声が上がっていました。

しかし、著者は、「その『感動』の多くは打ち上げ花火のように消えてしまう」「スポーツが本来持っている価値とは一過性のものではなく私たちの人生を豊かにし、さらに社会をポジティブに変えていくパワーに繋がっていくもの。スポーツを通じて自分とは異なる他者と出会い、力を合わせて競技する中で多様性の重要性を理解したり、コミュニケーションを支える基盤にもなります。またスポーツによって鍛えられる分析力や行動力、戦略性は学業やビジネスにも役立ちます。」とスポーツの価値を指摘。

序章に東京五輪の「レガシー」と何だったのか?第1章では子どもが輝くスポーツのありかた、第2章はスポーツから考えるジェンダー平等、そして、第3章に沈黙するアスリートたちと4つの大きなカテゴリーに分け、スポーツによって磨かれるのは「フェアプレーの精神」「論理的思考」「対話能力」であると説いています。

近年、部活動での体罰・暴力、勝利至上主義、アスリートのメンタルヘルスなど様々な問題が指摘されています。それらを温存させてきたのが理不尽なことにも従順に従う風土があり、体育会系学生は無理な仕事も拒まないとみなされ、就職活動でも有利に働き組織の中で重宝されてきた側面があるとも指摘。

JOC女性理事として、女性トップアスリートして歯に衣着せぬ意見を公表してきた同氏の主張は、私たち新スポ連が主張している「スポーツ権の確立」「フェアプレー精神の醸成」にも繋がるものを感じます。スポーツの価値についてどのように考えればよいか悩んでいる方にはぜひご一読されることをお勧めします。

「スポーツのひろば」2024年1・2月号より

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