脳の働きをまもるウォーキングのすすめ|スポーツ本Review

今年2月、スポーツ庁は「スポーツの実施状況等に関する世論調査」で、「成人の週 1 日以上のスポーツ実施率は 55.1%(前年度 51.5%)へ向上した」と発表した。その実施したスポーツ種目の内訳をみると、ウォーキング( 散歩・ぶらぶら歩き・一駅歩きなどを含む)が62.1%で断トツトップ。前年度と比較して5.1ポイント増となっている。

日本の成人人口(1億人)のうち約3人に1人、3千万人もの人がウォーキングに親しんでいるということになる。それだけの需要があるのだから、当然ウォーキングに関する書籍も山ほどあるが、これは「脳のはたらき」に焦点をしぼって、中高年層にウォーキングの必要性を解説する本である。

人口の高齢化にともない、認知症やうつ症状になる人が増える国内の現状に対して、東京大学名誉教授の筆者はウォーキング研究と普及・啓蒙活動に長く関わってきた。認知症予防にウォーキングを積極的にすすめてきたが、徘徊して行方不明になったり、事故に遭う高齢者が増えるという社会問題が生じる。徘徊を恐れるがゆえに、高齢者を外出させないという風潮もあらわれるなか、筆者は「高齢者にウォーキングをすすめてきた私は、難しい課題に直面した」と述べる。

そのような中、運動と脳のはたらきの関係についての研究は進められ、「運動する人は脳の萎縮進行が遅い」という結果がいくつか出された。本書では「やっぱりウォーキングはおすすめである」という根拠が束ねられている。

また、脳の活性化におすすめなものとして、2本のポールを手に持って歩く「ノルディック・ウォーク」が挙げられている。「ボケ防止」対策として、手(指)を複雑に動かすトレーニングをよく見かけるが、手の運動は脳を刺激すると言われている。実際、体のあちこちからの感覚を受け止める脳の部位は、足に比べて、手が占める脳の面積が大きい。だから、普通に歩くより、ポールを持って歩いたほうが、足の裏だけでなく、ポールを突くたびに指・手・腕・肩などが地面からの反力を感じとるので、脳はそれだけ多くの刺激を受けて活性化する。

日々歩いている人も、それほど歩かない人も「ウォーキングの効能」を改めて知るために読んでおきたい一冊。(佐藤信樹)

脳の働きをまもるウォーキングのすすめ
宮下充正 (著) 杏林書院 (2019年)

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