山に登る前に読む本|スポーツ本REVIEW

科学の眼で見た登山術

山に登る前に読む本―運動生理学からみた科学的登山術
能勢 博(著)
講談社ブルーバックス(2014年)800円+税
新書・192ページ・カバー付き

著者は「インターバル速歩」の提唱者として、ときどきテレビにも出演し、それをテーマとする単行本も出版していたので、以前から注目していた。インターバル速歩とは、3分間ずつ「速歩」と「ゆっくり歩き」を繰り返す歩き方で、ジムなどに通うことなく、持久力(最大酸素消費量)も筋力も同時に向上させるトレーニング法である。

本書は、登山を生理学の面から分析・解明し、特に中高年の登山者に焦点を当て、科学の眼で見てお勧めできる登山術を紹介している。

体力は加齢とともに低下するので、自分の体力(持久力・筋力)を測って、適切な歩行速度・栄養補給の仕方、水分補給の量や質(ドリンクの種類)、疲れない歩き方、膝関節の使い方、装備についての知識などを紹介している。またトムラウシや白馬岳の遭難事故を分析しつつ、その備えも提示している。

体力向上トレーニングでは、得意のインターバル速歩を、中高年の体力向上とともに登山のためのトレーニングとして解説している。最後に今流行りの富士山登山を取り上げ、富士山に挑戦するための知識と対策を述べている。

体験にもとづく登山術ではなく、実験で裏付けられた科学にもとづいて書かれていることが本書の特徴であり、自分(の体力や技術)と対象としての山をできる限り正確に捉え、「自分の頭で考えて登山する」ための最良の入門書と言えよう。(西條 晃)

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