キング・チーム・独走|スポーツ本Review

堂場瞬一の小説に関心を持ったきっかけは、ある一冊の本の書評を見て「スポーツを題材にした小説ってどんな風に書かれているのかな?」と思い、図書館で探したことです。あるわ、あるわ、本棚の一角に推理小説からスポーツ小説まで同氏の小説がおよそ50冊を超えるボリュームでずらりと並ぶ! ランニングが趣味であることから上記3冊に絞って「物は試し」と読み始めた次第。

「チーム」
堂場瞬一(著)実業之日本社(2008年)

一旦ページをめくると、臨場感あふれる小説の世界に引き込まれ、まるで実際に走っているような感覚になり、思わず「そうだ!そうだ!こんな感じだ!」と一気に3冊を読了。

どれも一読に値するのですが、箱根駅伝を扱った「チーム」は、いわば「落ちこぼれ」「寄せ集め」のチームである「学連選抜」の選手達のモチベーションをいかに維持するかに苦闘する主人公・浦の葛藤が見もの(?)。今までぼーっとして観戦していた箱根駅伝の裏側が垣間見え、次の箱根駅伝が待ち遠しくなります。

「独走」
堂場瞬一(著)実業之日本社(2013年)

次に「独走」ですが、小説の中ではスポーツ庁ならぬ「スポーツ省」が選手たちを五輪でのメダル獲得に向け、選手の人格・個性を無視して管理・育成するという近未来の姿に来年に迫った東京五輪に向けての動きがダブり本当のスポーツを楽しむこととは何なのかを考えさせる作品です。

「キング」は、ドーピング問題を真正面から取り上げた作品。まさに今、2020東京五輪日本代表選考会として日本陸連が取り組んでいるMGC(マラソングランドチャンピオンシップ)とダブり、現実もさもありなんと彷彿させる内容です。

「キング」
堂場瞬一(著)実業之日本社(2003年)

この他にも野球やクロカンスキーなど、同氏にはスポーツをテーマとした小説は数多く、スポーツ愛好者にきっと満足される作品が見つかると思います。一度手に取ってみることをお勧めしたいです。(園川峰紀)

タイトルとURLをコピーしました