なぜ欧米人は平気でルールを 変えるのか|スポーツ本REVIEW

ルールは成長する糧になる

なぜ欧米人は平気でルールを変えるのか
―ルールメーキング論入門
青木高夫(著)
ディスカヴァー携書(2013年3月)1,000円+税

日本が勝つとすぐルールを変えられる。船木・原田を筆頭に日本のスキージャンプ陣が活躍した長野オリンピック直後のルール改正もしかり。F1でホンダのターボエンジンを搭載したチームが16戦15勝した翌年の「ターボエンジン禁止」もしかり。

ずるい!

そんな感情をちょっと横に置いておき、「日本人がなぜずるいと感じてしまうのか」「なぜ欧米列強はルールの変更を訴えるのか」をクールに論じる一冊。

日本人は「ルールは、上のエラい人が作るもの」と考えていて、実情に合わないルールを変えたり、新しくルールを作ることは他人任せだという指摘は、なんとなくわかる。私も、決められたルールを守ろうとする気持ちはあるが、ルールの意味や目的まで深く考えたりはしない。

一方、ルール作りから喧嘩がはじまるのが欧米流の考え方。「我が社の製品はすばらしいから、法律を変えて売れるようにしよう」という発想らしい。だから、スポーツやビジネス、外交において日本がグローバルな舞台で戦っていくには、ルール作りから積極的に参加すべきだと筆者は主張する。

ところが、意外なのはルール変更後の検証結果。スキージャンプでは、「スキー板の長さを身長との比率で制限する」と変更されたことで、低身長の日本選手は不利になると言われたが、実際その後に活躍したのは169㎝のポーランドの選手だった。またF1では、ターボエンジンが禁止された後、ホンダのノン・ターボ・エンジンを積んだチームがシリーズ3連覇を果たしている。

つまり、ルールを作った側は一時的には有利な立場になれるが、長期的に見れば必ずしも勝者になれるとは限らないということ。むしろ逆に、ルールを変更された側が「なにくそ、負けてたまるか」と奮起して勝者となることもある。「ルールは成長する糧にもなる」と筆者は言う。

欧米は「一人勝ちじゃ面白くないよ」と言ってどんどんルールを変えてくる。そういうやり方をまず理解することは大切だろう。「ルールとはどうあるべきか」という問題について考えさせられる本である。(佐藤信樹)

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