ランニングの「救急箱」
本書のアメリカ版初版が発行されたのは1984年(2002年に改訂版発行)。著者はミュンヘンオリンピックにも出場した一流ランナーで、一線を退いた後もランニングを続け、その長年の経験から生み出されたのがこの1冊。全米で60万部のベストセラーとなった。
知人から薦められて「今さら…」と思いながら読んでみたが、その理論は古びたものではなく、ランニング生活のヒント満載でランニングブームの中、初心者からベテランまで多くのランナーに受け入れられる内容だ。
歩き→早歩き→ジョギング→週1回は60分走にトライなど、ステップを踏んで無理なくランニングを続けることを提唱することから本書は始まっている。
すべては紹介できないが、トレーニング計画の立て方やレースに向けての取り組み方、そしてランナーが陥りやすい故障への対処など幅広い課題にきちんと対応してくれている。まさにランニングの「救急箱」ともいえる一冊。
「走ることの一番の目的は、精神的、健康的な喜びであり、勝利やタイム、賞品などが最終的な目的ではありません。」
著者のこの思いが全ページに溢れていることが、この本を単なる学術書に終わらせていない。訳者の二人も市民ランニングに関わったり、自らもスポーツを楽しんでいることがこの本をよりランナーの心を掴んだ翻訳にしている。(小林一美)
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