女子選手の心身に迫る
「今の女子選手って、男性記者の前でも、『生理が来ちゃった』とか、平気で言うんですよね」という若手新聞記者のひと言がキッカケで、女性アスリートの悩みに真っ正面から切り込む連載が始まった。その記事に、サッカー佐々木、バレーボール眞鍋両監督の対談と、増田明美(陸上)、萩原智子(水泳)、小原日登美(レスリング)の鼎談をプラスしたのが本書である。
さまざまな選手が登場するが、印象的だったのは妊娠2ヶ月でインスブルック五輪(1964年)に出場した、長久保(旧姓・高見沢)初枝選手(スピードスケート)。妊娠がわかり、極秘で出場。競技中に転倒し、出血もあったが、その翌日に6位入賞を果たした。いま、女性選手に対して、「現役時代から、結婚して子どもを産む大切さを考えてほしい」と語る長久保選手。競技者であることと女性であること、その2つのバランスをどう取るかがこの本の大きなテーマとなっている。
ここ数年で、女性のスポーツを取り巻く環境はずいぶん良くなった。しかし、男性に比べて女性のコーチは非常に少ない。女性アスリートの育成には、まず女性指導者を増やして、体や心の悩みが相談しやすくすることが必要だと感じた。
そのためには、第一生命陸上部の山下佐知子監督が言っていることだが、「雇う側が監督は男と思っていて、女性指導者という発想がない人が多い」という現状をどうにかしないといけない。男性が変わらないと、女性スポーツの環境は変わらないのだ。
リンク