BOOK REVIEW「武士道シックスティーン」

「勝負」とは一体なんだろう?

武士道シックスティーン
誉田哲也(著)
文春文庫 (2010年)629円+税

最高に爽快な青春小説である。
愛読書は宮本武蔵「五輪書」、「斬るか斬られるかが兵法の本質」と言ってはばからない剣道エリート磯山香織と、勝負にこだわらない「お気楽不動心」で剣の上達を楽しむ西荻早苗。まったく価値観が違う二人の女子高生(16歳)が、ケンカしながら成長していく物語だ。

面白いのは、香織の性格。剣道以外のことに興味がない。いや、「斬る」ことの他に興味がないというべきか。短距離走については「だいたい、並んで走って勝敗を決めるという競技自体に、あたしはどうも馴染めない。そんな面倒なことをするくらいなら、スタート前に全員叩きのめしてしまえばいい。そうしたら、悠々と歩いてゴールできる。それが戦いというものだろう」と考えている。恐ろしい。

そんな香織に振り回される早苗だが、のほほんとしつつも結構頑固なところも見せている。

「勝ったら上、負けたら下。誰にも負けなかったら優勝、一回でも負けたらそこで終わり。それが剣道だろが。勝負ってもんだろうが」

「違う違う。それだけが剣道じゃない。もっと他の楽しみ方だってあるし、喜びだってある」(なんとなく体育協会とスポーツ連盟を思い浮かべてしまう…気のせいか?)

終盤では、無気力になってしまった香織をなんとか復活させため、早苗はビックリ大作戦を考える。果たしてこの二人は理解しあえるのか?

試合とは、勝負とは、スポーツとは何だろうと改めて考えさせてくれる本。彼女たちの世界観が変わっていくように、自分もまた新しい発見に出会えるよう精進したいなぁと感じた。「武士道サーティシックス」…あんまり語呂はよくないか。(佐藤信樹)