限界に挑むチャレンジャーの赤裸々な実態を描く
フルマラソンより長い距離を走る競技「ウルトラマラソン」をご存じでしょうか?
私たちが知っているマラソンは通常42・195㎞ですが、ウルトラという競技は100㎞もあれば1000㎞もある。世界最長のウルトラマラソンは「自己超越3100マイルレース」とされ最長3100マイル(4960㎞)、制限時間は1248時間(52日間)となっています。
オリンピック種目にこそなっていませんが、100㎞のウルトラマラソンも世界陸上連盟が世界記録を公式記録として認めており、欧米では権威のある競技として認知されています。
かつてのウルトラランナーはランナーのほんの一部しかいなかったものの、近年世界中のランナーがウルトラレースを走っているそうです。日本人選手も結構世界では活躍しており、強豪国の一つでもあるのです。
何か月も、何年も準備を重ね、10時間以上も痛みに耐え続け、やっとの思いでフィニッシュしても、称賛され報われるのはその時だけ。フィニッシュしても大金を手に入れる訳でもなく払うべき代償が多すぎるウルトラマラソン。そんなウルトラマラソンに何故かくも多くのランナーが挑戦するのか?
著者はこの疑問を解くために世界最高峰のウルトラトレイルランニングレース(UTMB)の参加資格を得るためにオマーン・デザート・マラソンからウルトラマラソンへの挑戦を2年間続け、最終的に「UTMB」に参加し「完走」の栄冠を手にします。UTMB完走に至るまでの過程で色んなウルトラランナーとの交流、レース中の苦しみや心の葛藤が赤裸々に示されており共感すること請け合い。
私自身も読み進めていくうちにアイアンマントライアスロンレースに参加していた時の記憶が蘇り共感するものがありました。ウルトラランニングに興味がある方や、そんな世界をのぞいてみたい方にお薦めしたい1冊です。
「スポーツのひろば」2024年11月号より