ベルリンの奇跡 日本サッカー煌めきの一瞬|スポーツ本Review

ベルリンの奇跡
日本サッカー煌めきの一瞬

平和を考えるためのスポーツ本

戦争への反省から「スポーツは平和であってこそ」と思われてきた。だが、内戦の中で、スポーツを通じて平和を築こうとしている人々もいる。「スポーツと平和」の多様性を、本の解説を読みながら考えてみよう。

1936年8月4日、ベルリン五輪・サッカー1回戦に日本は優勝候補の一つスウェーデンとの試合に臨む。初参加で体格の面でも明らかに劣っていたため、下馬評ではスウェーデンが圧倒的有利とされ、日本からの報道陣も全くこの試合を取材していなかったが、3対2のスコアで逆転勝利。まさに奇跡が起こり欧州で話題となる。

本書は「ベルリンの奇跡」に至るまでの黎明期の日本サッカー、時代背景、選手の特性、周到な戦術、貴重な証言、試合経過などの事実を積み上げ、奇跡ではなく、勝つべくして勝ったのだと記す。4年後の1940年開催予定の東京五輪でも活躍が期待されたが戦争で中止。選手の中には戦場に散った者も。シベリア収容所で亡くなったチーム主将・竹内悌三と娘・石井幹子の時を超えためぐり逢いを描くことで、平和であってこそのサッカー、スポーツ、そしてオリンピックなのだと訴える。

「スポーツのひろば」2025年6月号より

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