突然ですが、「好きなスポーツの絵を描いてください」と言われたら、何を描きますか。ある人は自分のプレイ姿かも知れません。あるいは気に入ったスポーツ用具でしょうか。いずれも「ノー」です。正解は、「スポーツは絵に描けない」です。なぜなら、スポーツはルールのことだからです。
それでは、「スポーツの目的は?」という質問はどうでしょう。これも答えに迷いそうです。ところが、それについても明快です。それは「楽しむため」です。そのためにルールがあり、ルールの果たす役割は三つ。まずは「公平さ」と「共通化」、第二は「暴力の抑制」、そして三番目の役割は、「えっ!」と驚くようなものです。それは「得点や勝利することを難しくすること」だというのですから。
その他にも、スポーツマンの条件、なぜフェアプレイやリスペクトが大切なのか、また暴力がなぜスポーツと相容れないのかなど、「当たり前」と思いながらも「どうして?」と改めて聞き返されると、上手く説明ができない事柄についても丁寧な解説がされます。
さらには、オリンピックの意義、スポーツビジネスの夢、メンタルトレーニングの意味、ケガの対処法、スポーツ選手の人生と将来、スポーツ指導者になるための心構えから、ドーピングやハラスメント問題までスポーツに関する「教養」が縦横に語られます。そしてそれらは、スポーツに親しむ人なら誰もが身につけておくべき「常識」であることを教えられます。
本書は、ユースアスリートを対象に編纂されたものですが、一般の人が読んでもスポーツの素晴らしさを再認識させられるでしょう。そのことによって自身のスポーツにおける新天地を開くヒントが得られることは間違いありません。(ひろば読者・松岡和生)