闇を泳ぐ|スポーツ本Review

全盲の選手がどのようにして泳いでいるのか

全盲の選手たちがどのようにしてトレーニングを行っているのか? 私自身、視覚障害の選手たちのパラトライアスロン大会への参加をサポートしている立場に身を置く者の一人として、少しは理解しているつもりでしたが、この本を読んでみて改めて視覚障害者の立場から記されたスイマーの気持ちが、理解できました。

闇を泳ぐ
木村敬一(著) 
㈱ミライカナイ(2021年8月)
1,500円(+税)B6判 272ページ

筆者は生まれて間もない2歳のころ病気で視力を失ってしまいます。小学校から親元を離れて寄宿舎生活を送る中で出会った水泳という競技を通じ、中学・高校・大学・社会人へと成長していく。その人生でいろんな人のサポートを受け、夢に見ていた金メダルを手にするまでの波乱万丈のストーリーです。

高校生で初出場した2008北京大会では自信満々、で臨んだがメダルに届かず一時挫折しかけたものの、その後トレーニングを重ね、大学生で出場した2012ロンドン大会では銀銅二つのメダルを獲り、2016リオ大会では銀銅四つの日本人最多のメダルを獲得。2020東京大会では金メダルを獲得。日本パラ水泳界での不動の地位を確立した筆者ですが、成長していく過程の中で両親を始め、同級生、コーチ、先輩、同僚等のサポートがあって初めて自分が生かされていることに気づいたことが、詳細に本人の言葉で記されています。

試しに目が見えない状態で泳いでみますと真っすぐに泳ぐことはできません。まさしくこの本のタイトル「闇を泳ぐ」の通りです。そんな不自由さに何らひるむことなくひたすら水泳に没頭する筆者の姿には感嘆の声しかありません。パラスポーツが2020東京大会を機に脚光を浴びてきているとはいえ、まだまだ日本では選手数は多くありません。パラ競技の何たるかを理解するうえでも一助となる一冊と思います。

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