“スポーツとは何か”というテーマが見えてくる
皆さんは「スポーツウォッシング」という言葉を耳にしたことがありますか。前書きによると「スポーツウォッシング」という言葉を日本でも目にするようになったのは、2020年の春あたりだと言います。
さて「スポーツウォッシング」とは? 著者によると「スポーツの爽やかで健康的なイメージを利用して社会に都合の悪いものを覆い隠し洗い流してしまう行為」と意味付けています。
「なぜ<勇気と感動>は利用されるのか」。この本の副題のテーマは常々私が気になっていることでした。ある新聞の読者モニターへのアンケート(1878人が回答)で「箱根駅伝を見ますか?」という問いに71%がはいと答え、その理由に867人が「大学生の頑張りに感動」をあげていました。ニュース番組では、政治問題よりもサッカーワールドカップや大リーグの大谷翔平選手の活躍がトップで報道されることが度々あります。
本書では1936年ベルリンオリンピックが最も有名なスポーツウォッシングだとし、その歴史を繙いています。さらに次の章では、主催者・競技者・メディア・ファンの四者の作用によるスポーツウォッシングのメカニズムを解説し、その本質に迫ります。
後半の「スポーツウォッシングについて考える」では4人の識者への取材を通して、この問題を読者に投げかけています。
「スポーツウォッシング」を突き詰めていくと「スポーツとは何か」というテーマが見えてきます。1・2月号で紹介した『スポーツの価値』と合わせて読んでいただき、そのことを考えるきっかけに本書がなれば幸いです。
「スポーツのひろば」2024年3月号より