スポーツを10倍楽しむ統計学|スポーツ本Review

データを知れば、新発見

著者は統計学者であり、セイバーメトリクスの専門家。「セイバーメトリクス」とは耳慣れない言葉だが、本書によれば「統計学の理論を用いて、野球における選手や戦術の科学的な評価を行う」こととしている。

その著者が、今回は野球以外の17の競技についてのデータにまつわるエピソードを紹介している。

スポーツを10倍楽しむ統計学
データで一変するスポーツ観戦
鳥越 規央(著)
DOJIN選書(2015年5月)1,600円+税
B6判・208ページ・カバー付き

ここに見出しをいくつか紹介してみると、
■水泳は若い選手が有利?
■なでしこジャパンのワールドカ ップ連覇の確率は?
■陸上―世界記録はどこまで伸び るか?
■圧倒的に後攻有利なカーリング
■7勝7敗で千秋楽を迎えた力士 の勝率は?
などと、スポーツ好きにはなかなか興味深いテーマが並んでいる。

著者は「本書が、スポーツをデータというフィルターを通して観ることで、その競技をより一層、量にして10倍楽しんでいただくきっかけになれば幸い」とまえがきを結んでいる。また記述統計(収集されたデータを整理し分析する統計学の手法)のテキストとして利用するもよしと述べている。

本書の特徴として、スポーツを観る側にとって魅力的なものとするためのこれまでの関係者の努力や著者の見解がちりばめられていることが挙げられる。

例えば、卓球でラリーが続くようにするための協会の改革、大相撲で技能系力士が技を繰り出せるようにする改革案などである。これらを底流に据えることで統計的なデータ処理に基づく内容を無味乾燥でない魅力的なものにしていると言えよう。(倉沢知裕)

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