
雑草魂を胸に
日本代表監督 森保一/西岡明彦(著)
青志社 2023年
1,540円(税込)240ページ
2026年FIFAワールドカップ出場を最速で決めた日本代表を率いる森保一監督。一見するとなんとなくおとなしく真面目な人という風貌だが、海千山千の選手たちを束ねる指導力や人間性はピカイチとも言えるのではないかと思います。
本書のタイトル「ぽいち」とは本人の名前に由来。森保一(もりやす・はじめ)なのになぜ「ポイチ」? 話は高校卒業後にマツダ・サッカー部(現サンフレッチェ広島)に入部したころに遡る。試合会場の電光掲示板に「森 保一」と表示され、得点アナウンスも「森」、同期生からも「ポイチ」と呼ばれ、次第に「ポイチ」という名前が定着。その後日本代表になってからもラモス瑠偉選手を始め他の代表選手からも「ポイチ」と呼ばれ、引退試合でもサポ―ターから「ポイチ~」と熱い声援が送られたことは彼が選手達からもサポーターからもいかに愛されていたかを物語るエピソードです。
1992年日本代表メンバーに選出、アメリカW杯予選出場(ドーハの悲劇を経験)、Jリーグが始まる1992年以降守備的MFとしてサンフレッチェ広島で活躍。京都パープルサンガ、ベガルタ仙台でもキャプテンを務め、現役引退後は東京五輪監督就任、2018年から日本代表監督。2022年カタール大会ではドイツ・スペイン等強豪国を破りベスト8。この間最も影響を受けた人物はハンス・オフト監督。この間オフト監督と関わった人からはみんな彼のサッカーへのひた向きさに心を動かされたといいます。
若手選手から「どうしても試合では緊張する。どうしたら平常心で臨めるか」と問われた際、「緊張してるってことはその試合のことを考えている訳だからいろいろと準備をしているんだ。その試合を理解しようとしている訳だから」と答えているそうです。このように含蓄のあるエピソードが満載の本です。
「スポーツのひろば」2025年7・8月号より