答えは、召使いが投げ入れたボールをご主人様が打つのが試合の始まりで、それを「サービス・ボール」と呼んだからです。サービスは奉仕・世話・もてなしなどの意味で、召使いの行為を指しています。
話は変わりますが、高校の教科書で「テニスコートの誓い」という絵を見た記憶があります。フランス革命の時代、あるいは池田理代子の漫画「ベルサイユのばら」の時代と言うとイメージが湧くでしょうか。第一身分が聖職者、第二身分が貴族、第三身分が農民や都市の労働者で、第三身分の人々が憲法制定を誓い合ったのが「テニスコート」だったという絵でした。
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当時のフランスではテニスという言葉ではなく、「ジュ・ド・ポーム」と呼ばれ、ボールを手で打つ遊びでした。後の人がわかりやすいように、絵のタイトルを「テニスコート」という名称に変えてしまったのです。
この掌でボールを打つ遊びでは、召使いがボールを投げ入れて、貴族のご主人様が打つことからゲームが始まったというわけです。
その後、手ではなくラケットでボールを打つようになり、フランスからイギリスへ中心が移り、室内から屋外の芝生の上で行う「ローン・テニス」へと変化してゆきました。
一球目を召使いが投げ入れるのではなく、自分で打つようになっても、サービスと言う名称は残りました。まだ上流階級の間だけで流行ったゲームだったからでしょうか。
「スポーツのひろば」2023年10月号より