日本テニス協会のルールによれば、正式の試合で使えるボールは白か黄色と定められていますが、現在市販されているボールの主流は黄色です。なぜでしょうか。
テニスの原型は13世紀のフランスで行われていた「ジュ・ド・ポーム」だといわれています。この頃は室内競技でしたが、その後イギリスに伝わり、ローンテニス、つまりは芝の上で行われる競技として発達していきました。
屋外で、濃い緑色の背景の中でプレイするには、ボールは視認性の面で白や黄色が見やすいだろうというのは想像できます。その後世界的な広がりを見せると芝以外のコートも増えますが、1960年代くらいまでは白いボールが主な国際大会で使用されていました。しかしカラーテレビの普及とともに60年代後半くらいからは徐々に黄色いボールも使われるようになりました。
黄色はテレビ中継の際、画面上で映えて見えます。また夜の試合が多くなり、暗くても比較的見やすい黄色のボールは広く使われるようになりました。そして86年のウィンブルドンで正式にボールが白から黄色に変更されたことで、「テニスボールは黄色」というイメージが定着したといえそうです。
さらに黄色には視認性が高いということのほかにも秘密があります。もしボールが膨張色の赤系だったら実際より大きく見え早く近づいてくるように感じるでしょう。逆に収縮色の青系だったらボールは遠くにあるように錯覚し球速が遅く感じられます。
その結果、タイミングを合わせるのが難しくなってしまうのです。その点、中間色の黄色は距離感がぶれることなくジャストミートできる! 高速で飛んでくるボールを打ち合う、テニスという競技にもってこいの色なのです。(ひろば編集委員・大垣晶子)