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空中での演技や水に入る時の美しさを競う、水泳の『飛び込み』競技。オリンピックでは、大きくしなるジュラルミン製の飛び板を使う「飛び板飛び込み(高さ3m)と、コンクリート製の台から飛び込む「高飛び込み(高さ10m)」が行われます。
助走をしてもよい飛び板飛び込みでは、板のしなりを利用して、いったん板より上に飛び上がってから水に入ります。高飛び込みでは、後ろ向きに立った姿勢や、逆立ちした姿勢から飛び込むなど、様々な飛び込み方法があります。
空中での姿勢は、体を伸ばす「伸び型」、足を伸ばして腰を曲げる「えび型」、足を曲げて両手で抱え込む「抱え型」、ひねりを加える「自由型」などがあります。すべての技には難易率が定められており、選手はどの技で試合に臨むのかを予め提出します。申告していた技と違う演技をすると0点になってしまう場合も。そして、男子は6回・女子は5回と、すべて異なる演技を行わなければなりません。その合計点で順位がつけられるため、多様な技を駆使し、それぞれの完成度が高い選手が上位になります。
また、技の難易度と同時に重要なのは、「入水時の美しさ」。まったく水しぶきが上がらない入水は「リップ・クリーン・エントリー/唇をはじくような音がするだけの入水」と呼ばれ、最高得点が出ます。
今年2月に国内選手を対象に行われた「国際大会派遣選手選考会」では、男子高飛び込みで玉井陸斗選手(13歳)が優勝しました。この大会で同選手は「ノー・スプラッシュ」、水しぶきを立てない入水で高得点をたたき出し、トップへ。今後行われる予定のW杯東京大会への出場を決めました。
高さ10mから飛び込む場合の入水時のスピードは時速65㎞。踏切りから入水までの時間は、わずか2秒。この一瞬に、持てる力を発揮しなければならない高飛び込み。今後最も注目したい競技のひとつといえそうです。
競技として行われるようになったのは、19世紀の終わり頃のようです。1871年に、イギリスでロンドン橋から下のテムズ川へ飛び込むという大会がありました。
オリンピック種目になったのは1904年からで、当初は男子のみで「ファンシーダイビング(華やかな飛び込み)」という名称でした。美しさを競うものではなく、入水後にどれだけ長く潜っていられるかで勝敗を決したそうです。その後、1912年からは女子もオリンピック種目になりました。2000年からは「シンクロダイビング」も始まっています。
オリンピック種目ではありませんが、飛込競技のひとつに「ハイダイビング」もあります(世界水泳では2013年から採用)。飛び込み台の高さは男子が27m、女子が20m。入水時の時速はなんと100kmにも及び、着水までは3秒ほど。あまりの衝撃のため頭からの入水は認められていません。 この命知らずのダイビングのルーツは、ハワイの戦士が勇気を見せるために崖から海に飛び込んでいた(王が自ら飛び込んでいたなどとも)ことが起源になったと言われていますが、定かではありません。
しかし当時を今に伝えるスポーツとして、「クリフダイビング」をご存じですか。その名称の通り、崖や城壁に設けられた台から海や湖に飛び込みます。2009年から世界大会(レッドブル主催)が行われており、2016年に和歌山県白浜町の三段壁で同シリーズが開催されたことで、日本でも知られるようになりました。(ひろば編集委員・大垣晶子)
「スポーツのひろば」2020年5月号より