義足使用とパフォーマンス|スポ研所長 やまけん先生のブログ!〈18〉

山崎 健(やまけん先生)
新日本スポーツ連盟附属スポーツ科学研究所所長。新潟大学名誉教授。専門分野は運動生理学、陸上競技のサイエンス。マスターズM65三段跳&3000m競歩選手兼前期おじいさん市民ランナー。

2012年のロンドン大会から障がい者スポーツやパラリンピック関係の話題がマスコミにも多く登場するようになりました。2019年11月のドバイの世界陸上ではライブ中継もありました。

障がい者スポーツのレベルは高く、イラン・ラーマン選手の持つ重量挙げパワーリフティングの世界記録310Kgは、健常者を上回っています(サポートウェアをつけない〝ノー・ギア〟タイプ)。陸上・走幅跳のドイツ・レーム選手の8m48も、世界選手権や五輪の記録を上回る驚異的なものです。

障がい者と健常者が同じトップクラスの競技会で競い合うようになったのは、2008年北京五輪・陸上400m出場に向け挑戦を開始した南ア・ピストリウス選手が最初です。問題は「義足が有利に働くか否か」で、当初世界陸連は選考対象の競技会出場を認めませんでした。その後「有利に作用するとは言えない」との裁定があり、北京五輪出場は参加標準記録に0.3秒届かなかったのですが、翌年の世界選手権やロンドン五輪では準決勝にまで進出しています。

健常者の記録を上回る

走幅跳のレーム選手は、ロンドンパラリンピックでは7m35でしたが、2015年ドーハの障がい者世界選手権では驚異的記録の8m40を跳躍しました。レーム選手は、2012年から同じ義足を使用しているので記録向上はトレーニングの成果であるとのコメントを残しています。

ドイツ選手権では5年前から、レーム選手の記録が健常者の記録を上回っているのですが、「ドイツ選手権者」としては表彰されず、1~3位にレーム選手を加えた4名の表彰セレモニーの後、レーム選手に別途金メダルを授与するということになっているそうです。

「メダルはいらないと言ったが、ドイツ陸上連盟がそうしたいと言うんだ。障がい者が健常者と同じ距離を跳べることを示して、パラスポーツを宣伝したいだけなんだけど」とのレーム選手のコメント(「日経新聞」19年9月12日より)です。

「スポーツのひろば」2020年4月号より

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