国の重要伝統的建造物保存地区に指定されている「卯辰山(うたつやま)山麓寺院群」をご案内します。ここは、金沢の観光名所「ひがし茶屋街」を囲むようにたくさんの寺院が建ち、細く曲がりくねった路地や坂道などが醸し出す独特の空気に満ちています。
金沢駅から路線バスの橋場町で下車し、浅野川大橋を渡り、交番の裏手・東山河岸緑地(トイレがあります)からスタートします。川沿いを直進すると金沢の三文豪の一人「徳田秋聲記念館」に突き当たり、左折し小道を進むと「寿経寺」です。「安政の泣き一揆」として知られる「七稲地蔵尊」が山門脇にあります。民衆がお城に向かって「ひもじいわ~い、米くれまいヤ~」と直訴した罪で処刑・牢死された7人を供養しています。
坂を上がると「観音院」です。8月の「四万六千日詣で」の際にトウモロコシを買い、家内安全を願って、軒先にぶら下げます。あちこちで目に留まると思います。さらに「宇多須神社」を目指し、脇の子来坂を上ると右手に「宝泉寺」があります。境内から城下町の家並が一望できるスポットです。
加賀前田家の家紋を飾る宇多須神社では、節分祭にはひがしの芸妓さんが黒紋付姿で舞踊が披露されます。境内に隠れている忍者の人形を探してみてください。泉鏡花の絶筆小説「縷紅新草」が舞台の「蓮昌寺」に立ち寄りましょう。
ゴールはウォーカーうってつけの「全性寺」とします。仁王門に1mほどの大草鞋(わらじ)が奉納されています。周辺の道筋の土塀は、江戸時代にタイムスリップする趣があります。
距離は約3㎞ですが、上ったり下ったりする半日コースです。要所に案内板がありますが、迷子になるのも楽しいですよ。
「スポーツのひろば」2023年7・8月号より
〈参考〉卯辰山山麓寺院群|金沢旅物語
https://www.kanazawa-kankoukyoukai.or.jp/feature/temples/kokoro/index.html