毎年10月末に開催されるプロ野球ドラフト会議、正式名称は「新人選手選択会議」。プロ野球の球団が将来有望な選手を獲得するための会議で、始まったのは今から遡ること60年前の1965年。毎年ドラフト当日は悲喜こもごものエピソードが全国で繰り広げられているのは読者諸兄もご存じと思います。

本城雅人(著)
講談社文庫 2016年
858円(税込)400ページ
ドラフト制度導入前の状況は球団と選手が契約する金額が天井知らず。将来を嘱望される選手達は財政が豊かな球団に偏る傾向があったことから、プロ野球関係者からプロ野球発展の為には戦力均衡を図る必要があるとして導入されたといいます。
ドラフト制度をめぐっては「空白の一日」を利用した江川卓投手の読売ジャイアンツ入団に纏わる話や希望球団に指名されるまで入団拒否を続け回り道をして入団に至った長野久義選手の例、また憲法が保障する「職業選択の自由」の侵害ではないか等と様々な事例や意見があります。
現在の選択方法によると1巡目は「入札抽選」2巡目は「球団順位の逆順にウエーバー方式で選択。3巡目は2巡目と反対(逆ウエーバー方式)その後はウエーバーと逆ウエーバーを交互に行う方法になっていますが、そこで選択する選手をどのように探し出してくるか、手腕が問われるのが「スカウト」という名の球団スタッフ。
将来性がある選手がいれば昼夜をたがわず全国を飛び回り、お目当ての選手を探り当て、その後入団に至るまで本人や家族や関係者と綿密に、秘密裏に話を進めドラフト会議当日ライバル球団のスカウト達の鼻を明かす選手を指名することがスカウトとしての醍醐味とも。
本作品は戦力外通告を受け、球団スカウトとなった主人公・久米純哉と同球団の敏腕スカウト堂神恭介を中心にストーリーが展開される野球界、ミステリー界を瞠目させたコンゲーム小説の一つ。
二転三転するストーリー。手に汗握るハラハラドキドキの展開にページをめくる手が止まりません。時折、色っぽい場面もありますが球界の裏側をのぞかせる作品の一つです。
「スポーツのひろば」2025年9月号より
