学校プールの危機、水泳指導を続けるには?

埼玉県の鴻巣市は2022年から中学校のプールを廃止し、水泳の実技はせず、事故防止の心得だけを教えることになりました。静岡県の沼津市も中学校の水泳指導をやめ、座学に代えました。学校プールの減少、水泳実技がなくなるという現実を前にして、日本水泳連盟の鈴木大地会長は、「命を守るスポーツ水泳」というコメントを発表しました。

学校プールの問題点

学校プールは、①1960年代から1980年代にかけて作られたため施設が老朽化し、改修して使い続けるか、建て替えるか、廃止するかという決断にせまられています。②プールの水・施設の管理と、水泳指導は学校と教職員の負担になっています。③屋外に作られたプールは、熱中症の危険、雨や気温の変化など天候の影響があり、屋内プールと温水化が今後は求められるでしょう。

水泳指導の目的

学校での水泳指導の目的は、①水難事故の防止、②水泳の楽しさや喜びを知り、泳法を身につけることです(学習指導要領による)。プールでの実技を止め、座学に代えると、この目的を達成するのは難しくなります。水に浮く感覚や、水中を進む動作は、水の中でしか体得できないからです。

三つの解決方法

では、どんな解決方法があるのでしょうか。①従来の屋外プールを改修して使う。改修の経費とともに、天候の影響、使える期間が短い、管理と水泳指導の負担などの問題が生じます。②既存の公営・民営の室内プールを使う。学校からプールまでの移動時間が必要になります。指導にはプール指導員の協力を得られる可能性があります。③学校を建て替える際に、学校と市民が共同で使えるプールを作る(学校が使用しない期間は市民に開放する)という方法もあります。ただ、拠点校に一つの室内プールという場合は、プールまでの移動時間が必要になります。
学校がある区市町村によって事情が異なるため、どれがベストとは決められません。ただ、「屋内・温水プール」という流れは避けられないので、①は次第に減少し、②と③が今後の方向になっていくのではないでしょうか。区市町村には、学校での水泳実技を続け、「水難事故の防止、泳ぐ楽しさと喜びを知り、泳法を身につける」ために、最大限の努力をしてもらいたいと希望します。
(「ひろば」編集長 西條晃)

「スポーツのひろば」2025年7・8月号より

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