折しもIT全盛の時代、eスポーツの話題が取り上げられ、次のような問いかけが聞こえてきます。「eスポーツってパソコンの画面に向かって一心不乱に操作しているけれど、あれってスポーツなのかな?」そこでまずは、一般社団法人日本eスポーツ連盟が行っている定義を見てみましょう。
eスポーツとは、「エレクトロニック・スポーツ」の略で、広義には、電子機器を用いて行う娯楽、競技、スポーツ全般を指す言葉であり、コンピューターゲーム、ビデオゲームを使った対戦をスポーツ競技として捉える際の名称。たしかに「eスポーツはスポーツです」という主張を含んだ内容になっています。
次に、「eスポーツはスポーツか?」について書籍または雑誌で見解を表明している二人の識者についてその要旨を示しておきます。
「そもそもそんな判断をする権限は誰にもないはず。一つ条件があるとすれば、それは大衆(市民)が支持しているか否か」(友添秀則)
「この問いはあまり意味がないが、あえて答えれば、スポーツの一つであるけれども、これまで私たちが実践してきたスポーツとはかなり異なった特徴を持つ」(坂本拓弥)
これらを参考にしつつ、筆者としてもこの問いに答えを与えることにします。「21世紀スポーツ大辞典」ではスポーツに関する10の代表的定義を主唱者ごとに表に列挙しています。
それによれば、「集中的な筋力の努力」「身体的卓越性」“Athletics”など身体活動を必須の要素としている定義が総計10のうち8つ。身体活動を必須の要素として含んでいないものが2つでしたが、うち一つは「スポーツの概念を定義することは困難であるが」との前提での説明でした。
よって、筆者は一つ残された次の定義に着目しました。
ディーム:スポーツとはルールに規制されて競争されたものである。
この定義は、上述の連盟のeスポーツの定義(主張)と矛盾せず、ここではこのことをを根拠に「e スポーツはスポーツだと言ってよい」と結論づけることにします。
ただ、上述の識者の意見にも関連しますが、この考察を進めながら、形式的とも思える定義づけよりも、今後のeスポーツの動向、詳しく言えば、グローバル資本主義の時代にビジネス志向の強いeスポーツが同じくビジネス志向を持つIOC・オリンピックとの接近、連携に注目したい気持ちにさせられたのも事実です。(ひろば編集委員・倉沢知裕)
〈参考〉中村俊雄他(編)「21世紀スポーツ事典」大修館書店(2015)/友添秀則(編著)「現代スポーツの論点」大修館書店(2020)/坂本拓弥「eスポーツを『てつがく』する」(「体育科教育」2022年10月号)大修館書店
「スポーツのひろば」2023年10月号より