3月第一週の週末は「バックカントリースキーは危ないスポーツ」というニュースが広がりました。
①3月2日11時頃、谷川岳天神平スキー場の管理区域外でスノーボードをしていた51 歳の男性が立ち木に衝突して死亡、雪崩の跡があったと言います。現場は急斜面と地形図では読み取れます。
②3月2日正午前、北アルプス・風吹岳の東側、標高1400m付近で2パーティー10人のスキーヤーが雪崩に巻き込まれ、2人がヘリで救助(低体温症)、8人は自力脱出して無事ということです。
③3月3日午後、利尻山の東側斜面、標高400m 付近で幅80~100m、水平距離約700m、標高差約300mの雪崩が発生、男女7人のスノーボーダーが巻き込まれ、44 歳の女性が死亡、20代の男性ガイドが右足骨折の重傷。
④北海道・東狩場山(1319m)では、2月28日、雪上車でのバックカントリースキーのガイド2人を含む11 人のグループが雪崩に遭い、オーストラリア人の男性58歳が立木に衝突して負傷、雪崩対策のエアバックを使用したので埋没は避けられたと言います。同じ東狩場山では、3月3日15時半頃、15人でスノーモービル走行中雪崩に巻き込まれ、28歳の男性一人が死亡。
⑤2月28日妙高・三田原山山頂から南東に約500mの地点で雪崩に巻き込まれた4人を発見、ヘリ搬送後アメリカ人男性37歳が窒息死、ニュージーランド人はヘリ搬送を拒否し自力で下山。
上記の事故以外にも、複数の事故が報じられています。
2月19~20日にかけて日本列島は異常高温に見舞われました。札幌で11.7℃、東京で13.7℃の2月の史上最高気温を記録、スキー場の雪も激減しました。その後、南岸低気圧の通過による雨雪と通過後の寒気の流入による積雪の増加が2回繰り返されました。この気象条件の経過だけからも、顕著な弱層(積雪内の雪粒の結合力が弱く壊れやすいところ)の存在と雪崩の危険性は予測されましょう。
リーダー、ガイドはこの気象条件をどう判断されたのでしょうか? 「せっかく遠方から来たのだから」、「高いガイド料を支払っているのだから」という迷いがあったのではないでしょうか? ガイドは、お客に対するサービス精神から、少しでも楽しませてあげようと、雪崩の危険性を過小評価したのではないでしょうか?
ガイドツアーの盲点として、正確にみておく必要がありましょう。(東京都勤労者スキー協議会・田畑健)
「スポーツのひろば」2024年6月号より