スポーツ政策 | 競技力向上=メダル獲得ではない

昨年12月、スポーツ庁のスポーツ審議会は「第2期スポーツ基本計画中間報告」を発表した。スポーツ基本計画とは「スポーツ基本法の理念を具体化し、国、地方公共団体及びスポーツ団体等の関係者が一体となってスポーツ立国を実現していく重要な指針となるもの」である。

この計画の特徴は、「スポーツの価値」の普及を通じて「一億総スポーツ社会」の実現に取り組む、としていることである。

国民のスポーツ状況について多くの課題が指摘されているが、その原因についての分析が弱い。計画の実施主体である国の責任が明記されていない。公共スポーツ施設の新設と改修を地方自治体任せにし、地方交付税、国庫支出金等の依存財源を減少させることは、「一億総スポーツ社会」の実現に逆行するものである。

実施主体である国は「援助不介入の原則」に基づき、ハード面の支援、とりわけ財政支援を充実させるべきである。スポーツ基本法を具体化するための個別法、例えばスポーツ施設整備法などを制定する計画を示す必要があるのではないだろうか。

また、登録・認証制度によって除外される総合型地域スポーツクラブの存続問題、それ以上に、圧倒的多数のスポーツ団体や単一種目スポーツクラブへの助成施策が欠落しているという問題がある。

競技力向上の成果がメダル獲得数で図られるような短絡的な見方はやめたほうがいい。陸上競技や水泳などでの競技者のタイム・距離・高さ・重さの記録向上、球技や武道などでのチームと個々の選手のパフォーマンスの質の改善でもって専門的に判断し、その結果をわかりやすく国民に提示するようにすべきである。(スポーツ科学研究所事務局長・青沼裕之)

「スポーツのひろば」2017年4月号より
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