2023年9月29日、新しいスポーツくじ「WINNER」の販売が開始されました。最初の指定試合は、男子バスケのBリーグでは、今季開幕戦の名古屋ダイヤモンドドルフィンズvsシーホース三河戦、JリーグではJ1名古屋グランパスvs横浜マリノス戦(10月1日)となりました。この新しいスポーツくじは2020年12月にスポーツ振興投票法の改定によって実施されたものです。
WINNERどんなものか、何のために取り入れられたのかを検討してみたいと思います。結論から言えば、「スポーツ賭博の解禁」への地ならしとなり、国のスポーツ振興の財源のギャンブル収入依存体質が加速することは避けられないでしょう。
WINNERの特徴は、これまで対象としていたサッカーのJリーグに加えて、男子バスケのBリーグを新たな対象としたことです。また、これまでのサッカーくじ(toto)は複数試合の勝ち負けを予想するものでしたが、WINNERは、単一の試合(一つの試合)の勝敗と得点差を予想するものとなりました。その結果、当選確率はサッカーくじ(toto)の160万分の1程度に対し、WINNER はBリーグで16分の1、Jリーグで18分の1の当選確率となります。限りなく競輪、競馬などの公営ギャンブルに接近し、「スポーツ賭博解禁」に道を開くことが危惧されます。
さらには、WINNERはインターネット販売なら試合開始の10分まで競技場において払戻倍率(オッズ)を確認しながら購入することができます。2000年のサッカーくじの開始時点で、国民の強い反対の声をやり過ごすために、「ギャンブルではなく寄付である」とし、それを担保するために、単一試合ではなく複数試合を対象にすることや競技会場で当日販売は行わないことなどを守ることでスタートしたのです。
ところが、スポーツ庁の提案の説明では、「スポーツ振興投票と『スポーツ』の結びつきを推進」することをウリにしています。「スポーツとギャンブルの一体化」ともいえるこのやり方は、スポーツ賭博への道を開くものといわねばなりません。「スポーツとギャンブルの一体化」とフェアプレイを育むスポーツの推進は決して相容れないでしょう。
国のスポーツ財源のあり方も重要です。
現在、スポーツ庁のスポーツ振興予算は約350億円、サッカーくじの収益金からの助成金は150~180億円、全体で約529億円の公的資金が使われています。国のスポーツ振興予算の約35%をギャンブル収入に依存していることになります。WINNERの導入は、このゆがみをさらに促進するものとなります。
国民のスポーツの権利を明記した、スポーツ基本法の趣旨に則って国と自治体のスポーツ振興予算を大幅に増やし、スポーツくじは廃止することを改めて訴えたいと思います。
(新日本スポーツ連盟専門委員・和食昭夫)