「スポーツベッティング」とは何か?

2022年6月7日、新聞等に「スポーツ賭博の解禁案、経産省が議論へ」といった記事が大きく掲載され、政界・スポーツ界は騒然となりました。「スポーツベッティング(betting)」とは他でもない「スポーツ賭博」のことで、参議院選挙直前にその全面解禁を目指す報道がなされたのですから、官房長官、経産相をはじめ「実現化の予定はない」と火消しに躍起になるのは当然でした。

しかし、実は2021年5月の自民党「スポーツ立国調査会」の「提言」を受け、同6月に経産省が「地域×スポーツクラブ産業研究会 第一次提言」で「スポーツ機会保障を支える資金循環の創出」方法として、「スポーツベッティングの可能性」をあげていました。そして、今年4月策定の第3期スポーツ基本計画でも「ベッティングなど」について「法的整理も含めた検討を行う」と触れられています。

今回検討されている「賭博」とは、基本的にtoto・BIGのくじ方式ではなく、「インプレイ方式」と呼ばれるスタイルです。野球なら打者の次打席の結果、投手の次打者への投球結果など、きめ細かくスマートフォンなどを使って、1試合に何度も瞬時に賭けることができます。また、一つ一つのプレイが賭けの対象となることで、八百長の可能性も高まります。

なぜ、このような危険な賭博を導入しようとするのでしょうか?
冒頭の報道では、中学校部活の地域移行の財源にするような内容でしたが、先述の自民党「提言」ではイギリスの例を引き、「市場の9割以上をオンラインベッティングが占め、(略)税収は年間900億円にも及ぶ」と述べられています。口実としてはサッカーくじ導入時と同じく「スポーツ振興」をうたいながら、実際にはそれを超える政府の財源を求めていることがうかがえます。まさに「貧者の税金」です。

また、経産省・スポーツ庁が掲げる「2025年のスポーツ市場規模の15兆円目標」達成の切り札としての性格もあり、スポーツ賭博を広く民間に開放する目的もあるといえます。実際、今年4月には電通など大手企業30社が「スポーツエコシステム推進協議会」を結成し、スポーツベッティングの推進を掲げています。

しかし、スポーツ賭博の実現のためには刑法の賭博罪を大幅に改定(廃止?)する必要があります。政官財がひそかに前のめりになっている今から、スポーツを国民収奪の道具にしないための警戒が必要です。(新日本スポーツ連盟附属スポーツ科学研究所・棚山研/羽衣国際大学教授)

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