膨大な公費投入による多目的スタジアム建設を急ぐ必要はない

 サッカーファンや関係者がブラウブリッツ秋田のJリーグ昇格を願いスタジアム建設を求める署名約18万筆を秋田県・秋田市に提出したのは7年前の2017年。以降、スタジアム整備については、県主導の「整備構想策定協議会」発足、八橋運動公園内・秋田大学敷地・秋田プライウッド(株)所有地の3候補地断念、市が候補地主導、外旭川まちづくり構想に抱合、県は外旭川地区への整備に難色などの紆余曲折を辿りました。

計画定まらず 市は迷走

 昨年11月、市は当初「八橋運動公園は市民のスポーツ活動に支障をきたす」として反対していた八橋を「Jリーグ昇格基準の緩和」を理由にあげて建設候補地に絞り込みます。候補地や計画が定まらない市の迷走ぶりに、市民からは批判の声があがったのは当然。状況をしっかり分析もせず、これまで場当たり的で杜撰(ずさん)な計画を繰り出してきた穂積市長の責任は重い。候補地を市に丸投げした県や、ブラウブリッツ側の姿勢も問われます。
 また、岩瀬ブラウブリッツ社長の軽率な言動にも問題がありました。観客数の水増し公表や根拠も示さず、唐突に「2025年度までにスタジアムを整備する」との明言は、スポーツマンらしからぬアンフェアな行為でした。問題だらけのスタジアム整備は、当面見合わせた方がよいでしょう。
 この間、県や市はブラウブリッツのJリーグ2部昇格を後押しするため、2018年に八橋陸上競技場(ソユースタジアム)を約10億円かけて改修。約1万8千人の観客席やナイター設備、電光掲示板などを整備しました。これによりブラウブリッツは条件付きでJ2ライセンスが交付され、現在に至っています。
 J2昇格4年目のブラウブリッツの成績は22チーム中、過去最高成績の10位。これまでの努力を認めるにしても、率直に言ってJ1昇格に何年かかるのか見通せない状況にあります。

「する」スポーツの振興を

 Jリーグ側の意向に沿って、当初の「民設民営」から「公設公営」に方針転換し、膨大な公費投入による多目的スタジアム建設を急ぐ必要はまったくありません。当面は現行の八橋陸上競技場をホームとして使用することがベターではないでしょうか。
 バスケットボールのアリーナやサッカースタジアムの整備は「みる」スポーツを押し進め、スポーツビジネスの特化につながりますが、「する」スポーツの振興への寄与は限られています。秋田の「する」スポーツの振興は不十分です。運動のできる公園の整備、既存施設の改修、指導者養成、部活動のあり方、選手流出などは大きな課題です。
(秋田県連盟・半田実)

「スポーツのひろば」2025年5月号より

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