
2004年、道の世界遺産として登録された熊野古道の中で、伊勢神宮から熊野三山を結ぶ巡礼の道が伊勢路である。自然、歴史、伝説など自然と人との深い関わりの中で作られていった優れた文化的景観を持つ道であると高く評価されている。

厳しい自然の中を歩くこと自体が修行であると考えられた信仰の道であるとともに、地元住民の生活道でもあった。地元に暮らす人が築き守ってきた熊野古道は道幅も広く石畳が美しい。山伏の修行路ではないが、西国一の難所といわれる八鬼山越えには行き倒れ供養碑が祠られているなど、山道は山道であり油断はできない。
熊野古道伊勢路にはいくつもの峠があり、それぞれの峠を歩くウォーキングコースがある。鎌倉期の巨石が残る大吹峠。伊勢と熊野の神が出会うという逢神坂峠(狼が出没した狼坂ともいわれる)。坂上田村麻呂の鬼退治の伝説が残り石仏の並ぶ観音道。鉄砲傷のある地蔵さんの佇む松本峠。紀州の殿様も参勤交代時に通った道でもある。お伊勢さんから熊野三山への参詣道は途中に残る多くの道標や石仏、歌碑などに、時を越え古人の精神文化に触れることが出来る古道である。
新スポ連 三重ウォーキングクラブでは例会でいくつかのコースを歩いたが、それぞれに趣が異なる楽しいウォーキングであった。杉や檜の木立の中に続く苔むした石畳を踏み、路傍に佇む道標や石仏、草花に心を和ませながら、いにしえ人の通った道、世界文化遺産の古道を歩いてみてはどうだろう。きっと心癒されるに違いない。
「スポーツのひろば」2011年11月号より