山崎 健(やまけん先生)
新日本スポーツ連盟附属スポーツ科学研究所所長。新潟大学名誉教授。専門分野は運動生理学、陸上競技のサイエンス。マスターズM65三段跳&3000m競歩選手兼前期おじいさん市民ランナー。
あのプレイヤーは「センスがいい!」と言われることがよくあります。一方「今のプレイはセンスが悪い?」とも言われることがあります。そういわれると「なんとなく?」わかったような気もするのですが、その実態は何なのでしょうか?
サッカーでは、3大B(Ball Control と Body Balance と Brain Work)やTIPS(Techniqueと Intelligence と Personality と Speed)の重要性が指摘されています。多分「センスがある」ということの基本にはこれらのことが関連しているのだと思います。
また、スポーツにおける3大T(Training と Technique と Tactics)という指摘もあります。ベテランアスリートのように技術的にはそれほど問題はなくとも体力的な出力レベルが維持できないケースもあり、実際のパフォーマンスとしては「体力不足」と評価されることとなります。
ではトレーニングによって体力レベルを向上させればパフォーマンスは改善されるのでしょうか?
答えは「ノー」です。実は技術的な課題は身体的能力と密接に関連して変容してゆきます。ゲーム後半にはスピード持久力は低下してきますので、前半と同じような「ボールスキル(技術×身体能力)」は発揮できなくなりますので、他の選択肢が要求されます。実はこのことが本来の「センスがある」という表現につながっているように思うのです。
今まで指摘してきたように、私たちの運動司令は「結果を予測して発せられている」ようですので、「このステップでは相手をかわせない」と他のステップに切り替えるケースと同じステップを繰り返してボールを奪われるケースとが生まれます。
前者は「センスがある」、後者は「センスが悪い」ということになるのでしょうか? ドイツのシュライナー先生は「サッカーのコーディネーショントレーニング(大修館書店、2002年)」において、「ある運動を行う際に、それがうまくいくように神経や筋肉が協調して働くこと」との視点から様々なトレーニング(ドリル)を提示しています。
「スポーツのひろば」2024年7・8月号より