スピードが足りない…!」|スポ研所長 やまけん先生のブログ!〈40〉

山崎 健(やまけん先生)
新日本スポーツ連盟附属スポーツ科学研究所所長。新潟大学名誉教授。専門分野は運動生理学、陸上競技のサイエンス。マスターズM65三段跳&3000m競歩選手兼前期おじいさん市民ランナー。

ボールゲームでドリブルする相手についていけない…もっとスピードがあったら!と感じている方もいるかもしれません。ところが、陸上短距離選手がラグビーチームに駆り出されて持ち前のスピードで相手を抜き去ろうと思ったがタックルで止められてしまった…あれ?

実はスピードには「SAQ」という概念があります。「S」は一定区間を走り抜ける「速さ(Speed)」です。

「A」は切り返しなどで相手を翻弄する「敏捷性(Agility)」、「Q」はネットプレイやゴールキーパーなどの反応の「迅速さ(Quickness)」です。それぞれ、助走付きの20mタイム、Tの字走のタイム、刺激に対する反応動作時間などなど様々な方法で測定され、そのプレイヤーの適性を判断します。

ボールを前線に運ぶバックスではSpeedが、ゴール前でボールをもらって相手を抜き去ってシュートを狙うフォワードにはAgilityが、相手のシュートにすばやく対応するゴールキーパーにはQuicknessが求められます。さらに対人競技では相手方の運動方向への予測をも含む対応が求められ、当然そのトレーニング法も、該当する種目で求められるSAQの持つ「特異性」を認識して実施されます。

これらはいわば「専門的能力」と規定されますので、例えば50mダッシュの反復だけでは改善されません。球技で必要とされる「スピード」と「スタミナ」も、1000m走のインターバルトレーニングだけでは改善されませんが、一方で60分のゆっくりジョギングなどは「一般的能力」としての有酸素持久力の改善には必要なメニューです。

怪我で休養していて復帰した際に、2時間の練習メニューは何とかこなせるのだけれど自分のポジションの課題にはついていけないというのは、この「一般的能力」と「専門的能力」との関係を示しています。

トレーニング計画では「期分け(Periodisation)」といって、準備期では一般的能力の改善を図り、試合期に向けて練習量を減らして技術課題の質を向上させて専門的能力の向上を目指します。また、目的とする試合の日程に合わせて2週間単位での練習の質と量をコントロールするスケジュールも求められます。

成長期の子どもであれば「練習やって食って寝る」ことで自然成長を促すことができますが、ベテランアスリートになればなるほどトレーニングの質と量、一般的能力と専門的能力の関係、疲労の回復やリハビリテーションなどをも視野に入れたいわゆる「ファンクショナルトレーニング(ボイル)」や「コンテクスチュアルトレーニング(ボッシュ)」などが重要になってくるのです。

「スポーツのひろば」2022年12月号より

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