私は「速筋系」? それとも「遅筋系」?|スポ研所長 やまけん先生のブログ!

山崎 健(やまけん先生)
新日本スポーツ連盟附属スポーツ科学研究所所長。新潟大学名誉教授。専門分野は運動生理学、陸上競技のサイエンス。マスターズM65三段跳&3000m競歩選手兼前期おじいさん市民ランナー。

私たちの筋肉には同一の筋肉内に「速筋系筋線維(白筋)」と「遅筋系筋線維(赤筋)」が混在しています。また、速筋系筋線維にも、速度が速く持久性が乏しいタイプ「超瞬発型(白筋)」と速度はやや遅いけれど持久性に優れた「瞬発型(ピンク筋)」の2種類があります。つまり、赤・白・ピンクの3種類の筋線維があるわけです。

この遅筋線維と速筋線維の比率が筋の収縮の性質を決めています。垂直跳や立幅跳の記録が良い人はパワーがあるので「速筋系」とされています。瞬発系のトレーニングを行うと、この速筋線維が発達(筋肥大)して、収縮力が高まります。

では、長距離が得意な人の場合はどうなのでしょうか?
持久的トレーニングを行うと改善の効果は大きいのですが、遅筋線維の数が増えることはなく、遅筋線維はあまり肥大しません。

また、速筋線維と遅筋線維の比率はトレーニングによっては変わらないことがわかっています。これは毛細血管の発達やエネルギー代謝プロセス改善などの機能的変化起こるからです。また、スピード持久力の改善には瞬発型の速筋線維(ピンク筋)が大きく関与します。

マラソンランナーもスプリンターも同じ筋組成?

このことから、長い時間運動を続けることができる「持久性」と一定の距離を速く走る「持久力」とは区分して考えたほうがよさそうです。つまり「長い時間運動を続けられて」かつ「速い」ことが競技で必要な「スピード持久力」ですので、「有酸素的持久性」だけでは不十分なのです。

また、パワーを決定するには、筋肉の「太さ」だけではなく「長さ」も重要です。たとえ遅筋線維が多くとも、手脚の長い選手はそれなりのスピードを生み出すことができます。現女子400m日本記録保持者の千葉麻美選手も、筋線維の遺伝子検査では長距離的要素があったようです。

また、ケニアやエチオピアのマラソントップランナーは、ジャマイカのスプリンターと同様の筋線維組成の遺伝子特性を持っているとも報告されています。つまり、速筋と遅筋の比率だけでは、単純に「速筋系」「遅筋系」とはならないようです。

「スポーツのひろば」2018年7・8月号より

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