膝が痛くても水中ウォーキングでリハビリ&トレーニング

膝や腰が痛くて、これまでの種目ができなくなったから、ウォーキングしながらリハビリにつとめています。読者の方々からこんなお便りが目立つようになりました。原因は病気や使い過ぎ、加齢によるものなど様々です。そこで膝や腰の痛みがあっても、リハビリもトレーニングもできる水中ウォーキングを提案します。

1 なぜ水中では痛みが軽くなり、楽に動けるのか?

水には人間の体を浮かせる浮力があります。胸まで水中に沈めると体重は約3分の1になります。おヘソまで沈めると体重は約2分の1になります。

体を支えている筋肉や関節にかかっている重さがそれだけ減ることになります。また浮力によって体の緊張が解け、リラックスするので、気持ちも楽になります。

体重が軽くなると、陸上では難しい姿勢も可能になります。膝が直角になるまで脚をひらいて四股の形を続けるのはつらいですが、水中では楽です。

腰が痛くても、腰痛向けの腰反らし=「これだけ体操」をすると、水に支えられているように感じます。水の密度は空気の約800倍あります。だから水中で手足を動かすと、大きな抵抗を受けます。ゆっくり動かせば弱い抵抗、速く動かせば強い抵抗になります。痛みがあるときはゆっくり動かせば、水の抵抗は弱いのでリハビリになります。

トレーニングで筋力を鍛えたいなら、速く強い力で水を押したり、かいたりすると効果的なトレーニングができます。リハビリとトレーニングの違いは、動かす速さ=水の抵抗の大小です。

腰痛の水中ウォーキングで注意が必要なのは、水の深さと体幹の向きです。深い水の中で、身体の前面全体に水の抵抗を受けると、腰に負担がかかります。やや浅めのプールを選び、横向き、後ろ向きのウォーキングを加えて、身体の前面だけに水の重さがかからないように気をつけましょう。

2 水中を歩いてみよう

①前に歩く(リハビリ)

基本のゆっくり歩きは、陸上の散歩のつもりで、水の抵抗をあまり感じないくらいの速さで、水の流れに乗ってゆっくり歩きましょう。痛みがあるときは、痛みを感じないくらいの速さを自分で見つけて歩いてください。

背筋は伸ばして、手の振りも陸上の散歩くらいで十分です。25mプール1往復(50m)だと、2分~2分半かかり、陸上の2・5~4倍の時間になります。

②膝上げ大股歩き(ストレッチ)

痛みが軽くなったら、またはもう少し強い動きをしたいと思ったら、膝をお腹より高く上げてから、大きく脚を前に出します。体を肩まで沈めながら、腕は水面近くに伸ばし、水を軽くかきながら膝をあげて大股で前へ進みます。

まだリハビリのつづきですから、腕と脚をストレッチのつもりで大きく伸ばしながら歩きましょう。膝をかばって、足はゆっくり着地しましょう。大股でもゆっくり歩きなので、25mプール1往復は2分ほどです。

③スピードを上げて膝上げ歩き(トレーニング)

いよいよ腕・脚・体幹のトレーニングです。ここからは筋トレモードに気持ちを入れ替えてください。
膝をお腹より高く上げてから、勢いよく前へ進みましょう。腕は水の抵抗に負けないように後ろへしっかりかきながら、脚を前にグーっと進めます。

腕を前に戻すときに強い抵抗を感じますが、水に負けないで腕を前へ進めます。続けていると息が上がって「ややきついな」と感じるくらいの速さで歩きます。

50m「ややきつい」速歩きをしたら、次の50mは①のゆっくり歩きに変えます。この「ややきつい」速歩きとゆっくり歩きを交互に繰り返すと、良いトレーニングになります。速歩きは50mだと、1分半ほどかかります。ゆっくり歩きは①にあるように2分~2分半ほどです。「速歩き」50m・「ゆっくり歩き」50mを1セットとして繰り返すのが、筋トレ・健康向上のトレーニングです。時間は1セットが3分半~4分なので、500mだと17~20分。1000mだと35~40分になります。

ここで「ややきつい」の説明をしておきます。陸上のウォーキングでも散歩やリハビリのためのウォーキングと、「運動」で体を鍛えるウォーキングは違います。散歩と「運動」のためのウォーキングの境目が、「ややきつい」「少し息が切れる」かどうかです。

息が切れなければ散歩、「ややきつい」と感じたら、そこからが運動であり、トレーニングです。「ややきつい」という感覚だけではよくわからないという人のために、心拍数でも表しておきましょう。

④後ろ歩きも忘れずに

最初は①の前歩きのように、ゆっくり歩きます。水に慣れてきたら、大股で歩いてみましょう。腰痛がある人は、必ず後ろ歩きもしましょう。

⑤横歩き

両腕を水面にあげながら、横へ踏み出します。腕を閉じながら脚も閉じます。右歩きを25m歩いたら、必ず左歩きもしましょう。往復すると、1セットは50mになります。

⑥横歩き+クロスウォーク

上の横歩きにクロスウォークを加えます。まず横へ一歩、次は脚を前へクロスします。また横へ一歩、次は後へクロス。横一歩と前クロス・後クロスを繰り返します。右方向へ25m歩いたら、左方向へも25m歩きましょう。右へ左へと歩いて往復すると、1セットは50mになります。

参考資料:YMCAフィットネスワオ編小西薫監修「水中ウォーキング」リーベル出版1999年)

「スポーツのひろば」2023年12月号より

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