栄光のランナー/1936ベルリン|スポーツは映画ともに

栄光のランナー/1936ベルリン
2016年製作/134分/G /フランス・ドイツ・カナダ合作
原題:Race
平和を考えるためのスポーツ映画

戦場でも、東西の政治的対立があっても、人種差別に苦しめながらも、様々な困難に臆することなくスポーツは続けられてきた。スポーツの強靭な生命力を映像の中に見つけよう。

ナチス独裁政権の下で1936年に開催されたベルリンオリンピックにて、史上初の4冠という偉業を成し遂げたアメリカ代表の陸上競技選手ジェシー・オーエンスの半生を描く。

ドイツと連合国が対立し世界的な緊張を高めつつあった時代において、オリンピックの開催や結果が国の力を示す武器として使われる不健全な状況下。オーエンスやその周囲の人間が残してきた足跡は、スポーツがアスリートのものであるということを示すと同時に、権力争いなどに利用される道具ではないことを強く訴えている。

ユニークなのは、オーエンスが黒人である点にも同様にスポットをあてている点にある。当時、アメリカで根強く残っていた黒人差別に彼が苦しめられる様子は、彼がオリンピックに参加し結果を残しながらも、不遇の扱いを受ける経緯にからみ、時にその構図がダブって見える。この論点は彼の功績からすると見落としがちなポイントであるが、非常に重要な要素でもある。

「スポーツのひろば」2025年6月号より

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