走ることを通し信念を貫く姿を描いた「ランニング」映画
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走るというシンプルな競技だけに「なぜ走るのか」というスポーツの核心に迫るようなテーマから、人々の信念を浮き彫りにした作品も多い。一方でシンプルな競技だけに、いかに競技シーンの見せ場を作るかという課題に様々なアイデアやテクニックを注がれるジャンルでもある。
1919年、ケンブリッジ大に入学したハロルド・エイブラハムズ。ユダヤ人である彼はアングロ・サクソンからの差別の鬱憤を発散するためランニングに勤しんでいた。同じ頃、宣教師の家庭に生まれたスコットランドの駿足ランナー、エリック・リデルは、自身が走ることは「神の恩寵をたたえること」と信じていた。それぞれの思惑が交差する中で、ハロルドをはじめとしたケンブリッジ大の4人組のアスリート、そしてエリックは1924年のパリ・オリンピック出場が決定するのだが…。
実話をベースに、1924年のパリ・オリンピックで400メートル走競技に出場した二人のイギリス青年を中心に、人々の信念と葛藤が交差する様を描いた物語。現代のようなカメラ技術や特殊効果手法のない当時の作品ながら、しっかりと練られた構図でアスリートたちが疾走する姿を緊張感あふれる画へと生み出すことに成功している。また俳優陣の演技も素晴らしく、イギリスの権威主義的な思想のはざまに悩みつつ自身のプライドのために戦う者たちの表情を生き生きと描いている。