スポーツ映画レビュー「フィールド・オブ・ドリームス」

156411321321321監督:フィル・アルデン・ロビンソン
出演:ケヴィン・コスナー
1989年 アメリカ


アメリカ野球文化の奥深さと、家族愛を描いたファンタジー映画。この作品に現れる男たちはみな、その心に失意や後悔といった傷を負っている。

1919年に八百長(ブラック・ソックス事件)で球界を追放された「シューレス」ジョー・ジャクソン。メジャーで1打席も立てなかった元選手の医者。名作を出しながら、現実に失望して断筆した作家。元マイナー選手で野球の話しかしない父と、亡くなるまで父に反目した息子。彼らがいつも胸の奥に抱えながら、しかし決してかなえられなかった夢を実現したのが、厳しい生活のなかで主人公がトウモロコシ畑を切り開いて作った球場だった。

作品には「誰かの声」やタイムスリップ、死者が目の前に現れるなど、ファンタジーの要素が満載。そこにメジャーリーグの史実や借金の取り立てといった現実が織り込まれる不思議なストーリー展開。ただ、家族3人で木のベンチに腰を掛けて野球を観戦したり、「亡き父」とキャッチボールするシーンがもつあたたかさは、野球が国民の娯楽として深く定着していたアメリカの素朴な日常を実感させてくれる。

ただ、この作品が作られたのはおよそ20年前。この間のアメリカでの野球人気の没落は著しい。その意味では、現代のアメリカでは失われつつあるノスタルジーを写した作品ともいえるのではないだろうか。(中村哲也)