BOOK REVIEW「先生、殴らないで!」

スポーツに暴力は必要か?

先生、殴らないで!
―学校・スポーツの体罰・暴力を考える
三輪定宣・川口智久(編著)
桑田真澄・坂上康博・平野和弘・土肥信雄・山本由美(著)
かもがわ出版(2013年8月)1,800円+税

「スポーツに『愛のムチ』は必要ですか?」と問われたら、あなたはどう応えますか?「必要ない」と即答したとして、「ではどうやって強いチームをつくるのですか?」と畳み掛けられたらどうしますか?

もし「強くなくたっていいさ、楽しめばいいんだから」と言ってしまったら、盥の水と一緒に赤子を流すことになる。なぜなら、スポーツを楽しむには、強くなったり、巧くなったり、進歩や成長が感じられないと続かないから。

では「スポーツと暴力」の問題をどう考えたら良いのか。なぜスポーツで暴力事件が繰り返されるのか、加害者・被害者はどう考えているのか、根絶するには何が必要なのか。数人の筆者が書いた文章を集めたのが、この「先生、殴らないで!」という本である。元巨人軍投手の桑田真澄へのインタビューを筆頭に、巻末には新日本スポーツ連盟をはじめ、日本体育協会・JOC(日本オリンピック委員会)など5団体の声明などが資料として収録されている。

私は読んでから次のように考えた。スポーツが楽しいのは、自分の頭で考え、判断して行動する、それが巧く行って勝利することもあるからだ。怒鳴られ、殴られて勝っても、真の嬉しさではないと思い切れるかどうかが、暴力を容認するか拒否するかの分岐点ではなかろうか。

「勝利至上主義が暴力の原因だ」という意見には同意しない。暴力で指導できると考えている人間が、勝利を盾にして、勝利主義の陰に身を隠そうとしているからだ。暴力では指導などできないと、堂々と主張することこそ必要ではないのか。

しかし現実には、暴力を容認せざるを得ない人々が多数を占めている(ある調査では40%が暴力容認※)。そうした人々が気づき、声を上げることなしにドラスティックな変化はないと思う。容認せざるを得ないと思っている人々へ、この本が一石を投じることを期待したい。(西條 晃)

※文部科学省編『私たちは未来から「スポーツ」を託されている』学研パブリッシング(2013年)。

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