今、リハビリ界で注目の「卓球療法」の魅力に迫る!〈1〉

文・写真=倉沢知裕(ひろば編集委員)
協力=ピンポンデイハッピー渋谷日本卓球療法協会

卓球療法って何だ?

卓球療法とは、医療機関や介護施設等において、身体疾患、認知症や介護予防が必要な方、精神疾患の方を対象に、医療・福祉職や卓球療法士が卓球を活用して医療的・社会的にリハビリを目指すもの。一言で言えば「卓球によるリハビリテーション」と言えるでしょう。

卓球というスポーツが持つ特性がリハビリテーションにうってつけという事実が医学的研究の上でも実践の上でも積み上げられています。そして全国規模の協会も設立され、取り入れる施設も広がりを見せています。

日本初!卓球に特化したデイサービス

今回お邪魔したのは、神奈川県大和市にある「ピンポンデイハッピー渋谷」。この施設はリハビリメニューを卓球に特化した日本初のデイサービスとして2015年12月に開所しました。

卓球療法の実技で指導するのは、日本卓球療法協会理事長の長渕晃二さん。長渕さんは中学時代に卓球部でした。最初はショート(バックハンド)と呼ばれる打ち方で、返球しやすいボールを送って連続ラリーを狙うやり方。レベルが上がれば、ポイントを競う試合仕様の打ち合いも行います。

端で見ていても、利用者の皆さんが真剣に目でボールを追っていることがわかります。また、「(ラリーが)途切れてしまった」「さあ、もういっちょ」という声が聞かれました。

卓球台を囲んで団体戦?!

個人戦のあとは卓球バレー、卓球ホッケーという応用の団体戦で楽しみました。まるで暖炉を囲むように卓球台を囲んでのプレイ。1対1の卓球とはまた違った盛り上がりが感じられます。

卓球療法で頭脳と身体をフルに使った後は楽しいティータイム。1320回のラリー最高記録を持つKさん(男性)は「集中できるね。記録を作った時は2時間も続けたよ!」と大げさに話し、隣の女性の方を笑わせていました。また、卓球ホッケーで見事なゴールを決めた男性は「卓球バレー、ホッケーは楽しいね。肩が悪かったので最初はできないかと思ったんだが無理なくできるね」と顔をほころばせていました。

Voice 1

「卓球しよう」と呼びかけると体を動かしたくなる

―ピンポンデイハッピー渋谷を運営する「介護のハッピー」社長の石井直樹さんに、卓球療法を取り入れた経緯やその効果などのお話を聞きました。

2012年に大和市西鶴間でデイサービスを開設したとき、卓球を使ったリハビリを試してみました。これは長渕さん(日本卓球療法協会理事長)と出会い勧められたこともありますし、すでに医療福祉施設を運営するフェニックスグループ(岐阜県)で実践されていて、効果が確かめられていることにも後押しされました。

最初は普通のテーブルをつなげて試してみたんですよ。そうしたら受けがいい。「体操しましょう」の呼びかけより「卓球しましょう」のほうが、すんなり受け入れられて参加される。やはり楽しさがあるからなんですね。そして集中できるから効果も出る。

その成果の上に立って15年、卓球に特化したデイサービスとしてこの施設(ピンポンデイハッピー渋谷)を開設しました。まだ卓球療法士講習が始まる前でした。「卓球療法」といっても認知度が高くなかったので、丁寧な説明が必要でしたね。「施設にカラオケはありますか?」などの問い合わせがありますが、「ウチには卓球台がありますよ」とお話をするわけです。

卓球療法のメニューには、ラリー(じっくり回数追求と真剣勝負)、卓球マシンを使った練習、卓球バレー、卓球ホッケーなどがあるのですが、ラリーでは回数の目標追求が励みになっています。現在の最高記録は1320回ですね。

卓球バレーと卓球ホッケーは応用の団体戦ですが、技術的には優しいのでこれまた人気です。バレーでは「スパイク」を決める、ホッケーではゴールに入れるわけですが、このときの「決めた!」「入った!」が快感のようです。ほどよい競い合いが集中・没頭、そして笑顔を生み出すのです。

12人でもプレイできる! 人気の団体戦

卓球バレー
数人が椅子に腰かけて台を囲み、ネットをボールを十分通るくらい上に上げる。サウンドボールをゴロでバレーのように打ち合う。自陣でボールが台から落ちるなどしたら相手に1ポイント。

卓球ホッケー
基本のセッティングは卓球バレーと同じだが、各陣地にカゴなどでゴールポストを設置。そこに打ち込んだほうが1ポイント。(右写真)

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「スポーツのひろば」2019年4月号より