2020東京オリンピック | 揺れるボート・カヌー?

カヌー銅メダリストの羽根田選手が「東京五輪なのに会場が東京と違うなら寂しい、絶対イヤだと思う」と発言しました。ボート・カヌーの会場見直しが話題になっていたときだけに、出場選手さえ宮城県長沼への変更に反対していると聞こえました。しかし羽根田選手のスラロームは東京の葛西臨海公園の隣で行われます。「ひろば」読者の皆さんは、この場所へ決まるまでの経過をきっとご存じでしょう。スラロームは急流でカヌーを操る技術を競う競技で、見直しの会場とは別物とはっきり断わらなかったのは、報道の片手落ちだと思います。

もう一方のカヌー・スプリントは、流れのない河川や湖沼など静水で行われ、有名なのはイギリスのテームズ川、欧米諸国を中心に普及してきました。ボートもまたテームズ川が有名で、同じような環境で行われると考えて良いでしょう。だから日本のボート選手たちは、海水で海風やうねりがある海の森を会場とすることに疑問を投げかけています。

これに対して日本ボート協会は「見解」を発表し、海の森を推奨するとともに、内部からの批判に反論しています。海風やうねり・海水の悪影響などをあげて、海の森が「アスリートファースト」ではないという批判や、建設費用が高すぎるという批判に対する反論です。これはボート会場をめぐって、協会と選手・関係者の間に矛盾と軋轢があることを物語っています。選手・関係者と協会の間に齟齬がある状態で、五輪に向けた正常な選手育成ができるのでしょうか。

ボート会場の見直しを考えているうちに、やや性質の違う問題に行き当たってしまいましたが、今後どのようにして相互の理解を深め、協調してゆけるのか注目していきたいと思います。 (ひろば編集委員・西條 晃)

「スポーツのひろば」2017年1-2月号より