キセキ ~高校野球を動かしたある男の物語~|スポーツ本Review

キセキ ~高校野球を動かしたある男の物語~
輝け甲子園の星編集部(著)
ミライカナイ 2023年 1,430円(税込)254ページ

女子球児の夢をかなえた「キセキ」

女子野球の競技人口は現在2万人を超え、40数校以上の高校に女子硬式野球部があります。10数年前までは、競技人口は600名程度、硬式野球部を備えている高校は全国でわずか5校。

大学以降は活躍の場がほぼなくなり、活動継続を諦めざるを得ない状況でした。このような中で、「女の子の甲子園」の実現に向けて動いたある男性の物語です。株式会社わかさ生活創業者「角谷建輝知(かくたに・けんいち)」氏がその人。

角谷氏が初めて女子硬式野球の試合を見たのは、今から10数年まえの故郷の球場で開催された全国大会。パラパラの観客、しかし選手のはつらつとしたプレイの高さに衝撃を受ける。

試合が終わった後、勝者も敗者も一様に泣きじゃくる姿に疑問を持ち近くの観客に尋ねると「あの子たちの野球人生はこの試合で終わる」と聞き彼女たちの実情を知ることに。ここから角谷氏の「女の子の甲子園」の実現への奮闘が始まります。

当初は各方面から批判が上がり、女子硬式野球部創設に全国行脚を図る企画に暗雲が立ち込めるも、人脈やマーケティング力を生かし次から次へと降りかかる壁を越えていく。

ついには日本女子プロ野球リーグ創設にこぎつけます。2021年夏、全国高校野球選手権大会中の休養日に女子野球決勝戦として「女の子の甲子園」を実現。ここに文字どおり「キセキ」が起こることとなりました。

残念ながら日本女子プロ野球リーグは2021年12月「無期限休止」宣言を出し活動をやめているが、角谷氏が育てた選手の中から「継承」する人物が現れてくることを期待したい、と物語は結んでいます。

角谷氏のまいた種は確実に大きくなっていることは、今各方面で活躍している女子選手がいることがその証といえます。野球愛好者の一人として女子野球の動向に注視していきたい。

「スポーツのひろば」2026年10月号より

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