昨年の改正スポーツ基本法の制定を受けて、第4期スポーツ基本計画策定に向けたスポーツ基本計画部会(第3期)が第10回会議まで開催されています。

今回私が注目したのは、第10回会議の配布資料として『生涯スポーツ・体力つくり全国会議2026 次期スポーツ基本計画に向けた期待、稼ぐスポーツ、スポーツに係る全ての人のウェルビーイング向上』が提出されたことです。
なぜこの配布資料に注目したかといいますと、計画部会に先立って、生涯スポーツ・体力つくり全国会議が2月に栃木県で開催されていたことにあります。そこでスポーツ庁長官の河合純一氏は「今回の会議では『スポーツがもたらす新たな価値の発見』を第4期スポーツ基本計画に向けて期待される取組について話し合います」と述べています。
そしてこの全体会議で、大塚眞一郎氏(ワールドトライアスロン副会長)から以下のような発言がされていました。
「これからは『スポーツの価値を向上させることで経済の発展につなげる』というところまで考える必要があると思います。我々はスポーツで稼いでいいのです。スポーツの価値を向上することで経済の発展につなげるというところに、競技団体として皆さんも一歩踏み込んでいただきたいと思います。経済を興すスポーツになるためのポイントとして、例えば『みる』スポーツの場合、アリーナ、スタジアムスポーツからの集客興行ビジネスや、映像からのエンタメスポーツビジネスが挙げられます。『する』スポーツの場合は、参加型スポーツによる人流と周辺からのビジネスが考えられます。『ささえる』スポーツの場合は、ネットワークや人材バンクによるコミュニティビジネス、『つながる』スポーツは、デジタルやAI技術開発ビジネス、『はぐくむ』スポーツは、健康や共生、子ども、ジェンダーなど、『ひろげる』スポーツは、外国資本の国内受入れ等が考えられます。さらに『つくる』スポーツは、インテグリティやガバナンス、セーフガードなど、新しいスポーツのコモンセンスを創っていくビジネスが考えられます。」
各界からの出席者を集めて、第4期スポーツ基本計画に向けて期待される取組についての議論の場を設けることで、基本計画の全体像と策定への道筋を付けるねらいがあったと言えます。
そして、間違いなく「第4期スポーツ基本計画」には、「稼ぐスポーツ」という言葉は露骨に使われないにせよ、そのコンセプトが根幹に位置づくことになるでしょう。
私たちは「稼ぐスポーツ」の対極にある国民の「する」スポーツ振興を重視して、パブリックコメントなどでスポーツ庁に働きかけていく必要があります。宇沢弘文が縷々説明しているように、スポーツは「すべての人々がゆたかな経済社会を営み、優れた文化を展開し、人間的に魅力のある社会を持続的、安定的に維持することを可能にするような社会的装置」である〈社会的共通資本〉なのです(宇沢弘文『社会的共通資本』岩波新書、2025年)。(武蔵野美術大学/新スポ連附属スポーツ科学研究所・青沼裕之)
「スポーツのひろば」2026年7・8月号より
