経験から学ぶスポーツで多いケガは何?

スポーツ保険金の支払いから見ると
スポーツで多いケガは何?

1 男女別・年齢別の発生頻度
 スポーツ外傷の発生頻度を見ると、男性は小学校高学年(3680/10万人)と大学生(4302/10万人)で児童・学生が多いのに対し、女性は30歳代(3669/10万人)、40歳代(4442/10万人)、50歳代(4603/10万人)と中年に向かって多くなる傾向があります。

2 傷害の部位、傷害の種類
 傷害の部位で見ると、最も多いのは手の指(20%)、足関節、膝、頭頚部、足の指と続きます。傷害の種類では、捻挫(34%)、骨折(33%)、打撲(12%)になります。(表1参照)
 部位と種類を合わせて見ると、手の指の骨折・ヒビが13%と最も多く、打撲や靭帯・腱損傷を含めて広げると、手の指の「突き指」が全体の17%とさらに多くなります。次に多いのは足関節で、捻挫が13%、骨折やヒビ・靭帯損傷を含めて広げると、足関節の傷害が全体の15%になります。それに続くのが膝関節で捻挫6%、関節損傷1・9%になっています。

3 年齢別の傷害部位
 未就学児(6歳以下)は頭頚部、小中学生は手の指と足関節、高校生から膝・下腿の割合が高くなり、中高年になると膝・下腿の割合がさらに多くなります。

4 年齢別の傷害の種類
 中学生以下は骨折が最も多く、高校生以上になると捻挫が多くなります。

5 入院
 全体の92%は入院なしでしたが、入院することになった部位で一番多かったのは、膝で全体の28%でした。

参考資料:スポーツ安全協会「スポーツ障害統計データ集 平成29年度版」、これはスポーツ安全保険の保険金支払い実績を分析したものです。

動画を見ながら腰痛とひざ痛を体操で治そう

 腰痛とひざ痛に悩んでいる人が、私の周囲にもたくさんいます。8万人の腰痛とひざ痛を治してきたという整形医による改善体操を試してみませんか。痛みのタイプを知るための「ナビ診断」と、改善する体操を一覧表にまとめておきました。(表2:「痛みナビ診断」と体操)

参考資料:銅冶英雄「決定版!関節痛を自分で治す名医のワザ」宝島社2020年。ほか数冊。

ケガの経験から
―体験談―

ケガの経験と回復の様子
佐々木睦昭(千葉県スキー協議会)

 スキー、テニス、バドミントン、バレーボール、ダイビング、山登りなど多くのスポーツを楽しみながら、気がつけば67歳になっていました。
 学生時代はスポーツとは無縁の生活を送り、スポーツは社会人になってから始めたものばかりです。そのせいか基礎ができてなく、体力任せでやってきたためケガの経験も豊富(?)です。
 右膝と左膝は半月板損傷で内視鏡手術を受け、右腕上腕二頭筋長頭腱は断裂。最近では内転筋及び恥骨筋群の肉離れ、右肩腱板の損傷とデパートとは言いませんが、小売店並みの豊富さを誇って(?)います。
 ケガのために整形外科等を訪れると、決まって言われるのは、「使いすぎというより酷使ですね」「どうすればこんなになるんですか」です。
 テニスをすれば朝~夕方まで、スキーに行けばトイレとご飯の時間以外は滑って、休憩はリフトで、山を登ればコースタイム短縮にムキになる、など思い当たる節が数々。
 回復は、通院診察とリハビリが基本ですが、膝は若気の至りで リハビリを中途で投げ出し、軟骨がすり減りすぎて「影も形もない」と言われました。それでも地道に通院を続け、なんとかスポーツも続けています。医師、理学療法士、トレーナーの皆さんありがとう! 新しいケガでお世話にならないように頑張りますね。

能天気な人生スキーヤー
武田健一(東京都勤労者スキー協議会)

 山奥の雪深い鉱山育ちで、鉱山主催のスキー大会がスキー遊びの原点でした。最初のケガは高校1年、スキーで左足首を骨折しました。
 社会人になってオフロードバイクに熱中、30歳の頃に右肩を脱臼し、以降バイクとスキーで脱臼を繰り返しました。リハビリ訓練を受けなかったせいか、ボールを投げられるようになるまで10年はかかったかも?。50歳を過ぎたころ、モトクロスのレース場で頭から落下し、急性クモ膜下出血の大事故に。救急搬送・入院、視野が傾く視神経障害も発症、他にいろんな障害が出て、2ヵ月も入院する結果になってしまいました。 
 家族からバイク禁止宣告、受諾しました。でもスキーを止めることはできません。深雪に突っ込んで中指骨を骨折、硬いバーンで左親指を骨折するなどケガは絶えず、そのたびにチタンプレートの接合手術をしました。レースで目標にチャレンジすることが楽しかった。
 74歳のとき越年スキーから帰って急に頭が痛くなり、正月明けにすぐ脳外科に行ったら即入院。頭を打った記憶はまったくないのに診断名は「慢性硬膜下出血」。大学病院、総合病院、リハビリ専門病院で計2ヵ月もの長期入院でした。
 76歳になったとき、右膝に痛みが出て「全置換」手術が必要と診断されました。その時の知見ではスキーは可能ということで、手術を受けることに。予想をはるかに超える長時間の手術で、麻酔が切れてから2日間は痛くて震えていました。2か月の入院中はリハビリ、理学療法士の訓練は拷問でした。「ケガと手術はもう嫌だ」と言ったら、家人から「やっと普通の人になった」と言われました(笑)。   ガンや心不全、脳梗塞など、救急車で搬送され、今は後期高齢者ですが、好きなことは止められません。「能天気な元気おじさん」は、週3回以上の水泳をしながら、体に合った筋トレをやるようにしています。これからもスキーを末長く楽しみたいと思っています。

自分の身体のクセを知る
大野祥子(北海道勤労者スキー協議会)

 毎朝、布団の中で足指と手指をグーパー、痺れなし! 動く!よし! おはよう。
 学生時代の話です。スキーの練習中に昼ごはん前の1本で派手に転んでひざ靭帯を伸ばしたことがありました。最後の1本は怖いですね。調子に乗って滑っていたら内脚ひっかけて目の前真っ白、あららやってしまった!病院でギプスをはめられ2週間ほど松葉杖。取れてからはリハビリらしきものもしなかったように記憶しています。そのシーズンは棒に振りましたが、スキーもほかのスポーツも問題なくできるようになりました。
 そのあと椎間板ヘルニアになったときに、筋力をつけつつ柔軟な体になるようにヨガを始めました。食生活の改善も断食も行い、全体的に調子がよくなりました。
 腰回りは相変わらず硬いので、自分の身体の「くせ」を知り、動きを意識して身体を使うことを心がけています。
 朝がよければすべてよし。とはいえ、顔を洗うと腰が『バキッ』、歩けば股関節とひざが『かくっ』と不具合は日常茶飯事です。身体と相談して、無理せずケガなくスポーツを楽しみたいです。

接触プレイがあるからこそ、心がけたい
植山良和(全国サッカー協議会)

 15年前に左膝の靭帯を痛めました。接触プレイから相手選手と交錯し、地面に倒された際に相手選手が膝の上に乗りかかるように一緒に倒れた。そのシーンはまざまざと覚えています。
 大学病院でMRIを撮ってもらいました。靭帯と半月板損傷。そして軟骨に至ってはグチャッと潰れた状態。関節鏡(内視鏡)による手術を行いました。その中でも潰れた軟骨の除去が後々サッカーどころか日常生活に響くことになってしまいました。
 「軟骨は一度なくなると再生できない」と聞かされたので、サッカーを続けるには膝の周りの筋肉を鍛えるしかない。当初はリハビリにいそしんだが、次第にサボり気味になっていきました。現在は左膝をかばっているうちに右膝にも支障をきたし、階段の上り下りにも苦慮するようになってしまいました。
 接触プレイ避けられない競技だが、常日頃から協議会全体のメンバーに言っていることは、「怪我をしない、させないプレーを心掛けるように!!」なかなか難しい課題ですが、これに尽きるのではないでしょうか?

片手泳ぎで海峡横断
西條 晃(「ひろば」編集長)

 オーストラリアの海岸から島まで、海峡を横断するチームに参加したことがあります。4人で交代しながら20㎞を泳ぐレースでした。周りの人はケガするから「スキーに行っちゃダメ」と注意してくれましたが、北海道時代からスキーでケガをした経験がなかったので、なんの不安もなくスキーにでかけました。
 妙高のスキー場で雪溜まりの固さを見誤り、転倒してしまいました。骨は折れなかったのですが、上腕の靭帯が骨から剥がれる「剥離骨折」と診断されました。1週間で固定のベルトが取れ、3週間でリハビリに入りました。体操やストレッチで、毎日少しずつ可動域が広がり、昨日できなかったことが今日はできる楽しさも味わいました。肩の痛みは残っていたので、日本にいる間は、左手一本でクロール・背泳ぎを泳ぐ練習をしました。ケガから一ヶ月後にオーストラリアのビーチでなんとか両手でクロールができるようになりました。
 横断レースの当日は、私を含む3人は10分間ずつ、若い女性スイマーが20分間泳いでリレーし、制限時間内に泳ぎ着くことができました。肩が痛くなると、片手で泳いだり、平泳ぎに変えたりして、なんとか自分の責任を果たしました。
 このケガから得た教訓は、どんな状況にも対応できるように、身体を柔らかくしなやかに動くようにすること、バランス感覚を磨くことでした。ゆる体操や野口体操に興味をもち、ヨガを始めたのもこのころからで、20年ほど続いています。

エアロビクスで足を捻挫
飯塚さぎり(「ひろば」読者)

 スポーツクラブで、人気のインストラクターによるスタジオプログラムに参加しました。ウォーキングから色々動いていき、たまたまあまり得意でない方が横にいて、その方を避ける際、汗で滑り捻挫。しかし誰も気がつかないし、止まれない中でなんとか終わり、シャワーを冷水でかけ続け、帰宅後、湿布をしました。
 一ヶ月経たないうちに、腫れも引き、足を使わないで筋トレをしていたせいか、完治にいたりました。今思うと、エアロビクス用のスニーカーではなかったのも、原因だったのかも。それ以来スニーカーは、高くても、しっかりしているのを履くようにしたり、、初級のエアロビクスプログラムに戻し、危険がないようにしてきました。
 少しエアロビクスは休みましたが、復帰する時はトラウマになりそうで怖かったです。普段の外出にも、スニーカーを履くことが多いのですが、ちょっとした段差などには、気をつけるようにしています。

スキーで肩を打ったけれど?
小泉 弘(埼玉県スキー協議会)

 カービングになる前のストレートスキーは、平らに近い緩斜面でまわるのが難儀でした。同じ斜面で2回転び、肩の同じ所を打ってしまいました。たいしたことはないと思い、医者に行かずにいました。左肩を打ったので、長い間左手で荷物を持つと痛み出し、右手に持ち替えました。治療が必要だったと後から反省しています。今はカービングスキーなので簡単に曲がれます。
 滑る時に気を付けていることは、春スキーでは、凍っている所と新雪の所をスピードを落として確認するようにしています。

リハビリ日記
川上咲子(東京都スキー協議会)

 今年3月スキー場のコブ斜面でバランスを崩しました。スキー板が外れず、立ち上がるが膝に力が入らない。休憩所に戻り雪でアイシングし、友達のサポーターを借り、最終日だったのでそのまま車で帰りました。
 左膝前十字靱帯損傷の診断で膝の腫れと痛みが治まるまで抗炎症鎮静剤と湿布で対応。外出時はシーネで固定して松葉杖使用。膝専門医からは手術せず、筋力を付ける方針が出されました。シーネと松葉杖はやめ筋力を付けるリハビリが始まり、1回20分で週2日通うことに。理学療法士が1ヶ月の治療方針を出してくれます。まずは、左足を伸ばしていくことになりました。
 7月になると膝の痛みは減りますが、左足をかばった歩きになるので、太もも、ふくらはぎ、腹筋、背筋力を付けていきます。器具を使い足の上げ下げ、エアバイクのトレーニングが加わりました。2週おきに鍼灸院に通い血行をよくしてもらいました。
 9月、には片足立ちが安定し、次はジョギングが目標です。椅子に座って、片足で立ち上がることができれば走ってもOKですが難しい。足裏や股関節の使い方を教わりました。走るにはまた違う筋肉や足裏、股関節の動きが必要で、リハビリと筋トレはまだしばらく続きます。

テニスで腰痛、でもすぐ治る
唯根大尚(「ひろば」ライター)

 テニスを半年ほど頑張ると、腰痛を発症し、痛くてテニスができなくなるのを繰り返していました。これって「ケガ」なのかなあ、単なる「故障」ではないかと、テーマに即しているか不安になり、言葉にこだわって調べてみました。
 辞書によると、「怪我」とは、〈過(あやま)って、身体に傷を負うこと。また、その傷〉とあり、「傷」とは、〈切る、打つ、突くなどして、皮膚や筋肉が裂けたり破れたりした部分〉とありました。
 テニスの練習や試合を〝普通に頑張る〟ことは〝過って〟にあたるのだろうか、よくわからん。対して「故障」とは、〈正常に動かないこと〉だから、腰痛は該当するに違いない。そこで、ここでは広く身体の故障をケガと捉えます。
 腰痛がひどくなると、やむなく整形外科へ。すると、疲労性腰痛と診断され、いわゆる牽引治療を受けることになります。腰や首をやんわりと機械式のベッドなどで10分ほど伸ばしてもらうと、2~3日で意外なほど簡単に治ってしまうのです。その後は、近くにある公園の鉄棒にぶらさがって、自前の牽引治療をしつつ、テニスに励むことにしています。

剣道で親指の爪をはがしたこともあった?
淺間輝男(「ひろば」記者)

 スポーツをしていて大きなケガはありませんが、「ケガの功名」といったことを?。
 20代後半、剣道で「出頭面」を打つことを意識して稽古していたころ、右足親指の生爪をはがすことがよくありました。原因は相手の動き鼻を鋭く小さく面を打とうとするとき、相手の右足親指の腹に当たって生爪をはがしているようで、数年間はまともに爪があった期間の方が短いような状況でした。
 同じ頃、ランニング中に左ふくらはぎの軽い痙攣が起きるようになりました。その都度、止まらずに治そうと、できるだけ長く踵を地面につけ、ふくらはぎをできるだけ伸ばして走る方法を身につけることができました。もちろん「蹴る」ような動きをしないようにし、その走り方は結果として体をひねらない動きにつながったようです。
 剣道で右足親指がぶつかるのは体をひねっていた結果であることに気づき、剣道でも「体をひねらない」「蹴らない」合理的な動きを身につけることができたように思います。もちろん、生爪をはがすようなことはなくなりました。

山登りは足元をよく見て
斉藤光次(「ひろば」記者)

  私は、小学5年生から登山や山歩きを始めて、約70年となります。この間、ケガをしたのは2回です。 
 1回目は、群馬県の崇岳に行った時に山頂から岩場を降りる際、岩の間に足を入れてしまい右足を捻挫してしまいました。捻挫の部分をテーピングテープでおさえ、手ぬぐいで靴の上からよく縛り、ゆっくりと降りました。
  2回目は、奥多摩の山で、藪の中を歩いているときに枯れ枝を踏んでしまい、折れた枝が足のすねに当たりました。持っていた水で冷やしました。それ以来30年間ケガはしていません。
 山登り・山歩きで気をつけていることは、①足元をしっかりと見ながら歩く。②足をなるべく上げて歩き、石や木の根につまずかない。③景色・木々・花など見る時には止まって見る。④粘土質の滑りやすい下り坂は気を引き締め、斜め歩きをする。⑤狭い道でのすれ違いは相手に譲る、です。
 私は、いつもテーピングテープ、包帯、・手ぬぐい2本などを持ち、最近は、出発するとき体調を確認し、膝サポーターや自分に合ったケア用塗り薬を使います。

「スポーツのひろば」2024年12月号より

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