スポーツ映画レビュー「瀬戸内少年野球団」

〈 監督 〉篠田正浩
〈 脚本 〉田村孟
〈 出演 〉夏目雅子, 山内圭哉,大森嘉之
    佐倉しおり,岩下志麻
1984年 日本

暗く長い戦争が終わった。しかし、戦地に赴いた夫・正夫からの便りは途絶えたまま。駒子は、姑から催促される義弟との再婚には踏ん張りがつかないでいる。駒子のクラスの竜太と三郎も戦争で父を亡くしていた。そこに元提督の娘・武女(むめ)が東京から転校してきた。

舞台は、瀬戸内海に浮かぶ島のありふれた港町。そこにも人々が住み生活を営んでいる。戦争はそれらの人々からも掛け替えのない肉親を奪い、ささやかな日常さえも持ち去っていった。

それが、終戦と同時に手のひらを返したように、校長は教科書に墨を塗らせ、村長は「国民精神総動員」の幟を降ろさせる。うろたえる村長や校長を尻目に、子どもたちや島の人々は、突然押し寄せた「民主主義」の波に翻弄されながらも、たくましく明るく生きている。

やがて、正夫が負傷しながら密かに復員していたことが分かったが、駒子は義弟との関係による自責から会うことを拒む。それを、竜太と武女の計らいで再会を果たし、野球チームを結成する。そんなとき、武女のもとに父親が戦犯として、処刑されたという一報が届いた。

武女は東京に帰ることになったが、武女の本心を察することができない竜太は見送りに行けない。武女は竜太への淡い思いを残して、離れていく島をいつまでも眺めていた。

混沌の中に将来を描けないでいる子どもたちが、野球団結成で一気に目を輝かせる。そのメッセージは「スポーツは平和とともに」のスローガンを思い起こさせる。(松岡和生)