もうひとつの 日仏の架け橋|スポーツ本REVIEW

FSGTの歴史から学ぶ

もうひとつの日仏の架け橋
スポーツ交流 1975-2010
伊藤 高弘 (著)
光陽出版社(2010年)2000円+税

「やっと出た!」というのが本書を手にしたときの最初の印象でした。

著者の伊藤高弘氏はFSGT(フランス労働者スポーツ・体操連盟)と新日本スポーツ連盟との30年以上に渡るスポーツ交流、その架け橋のまさに基礎を築いてこられた方でありますが、これまで私たち連盟員がFSGTやフランスの歴史や現状を知る機会はそう多くなく、体系的に学べる材料が待たれていたのが実情です。

伊藤氏は本書を刊行した目的を「フランスとFSGTの歴史的・現代的な全体像を臆面もなく描き出」すことであるとし、「国際交流の一つの遺産としてスポーツを愛好する国民諸階層に手渡したい」というのが執筆の動機であると序章で述べています。ここからも著者の執筆にあたった意気込みと、スポーツ交流のさらなる発展を願う強い思いが感じ取れます。

FSGTの発展の歴史についてここで詳述することはしませんが、いくつかの重要な転換期があり、そこから学ぶことは多いです。パリ郊外に位置するヴィトリー市の総合スポーツクラブの実例も非常に興味深いところです。

また、本書ではCSIT(国際勤労者スポーツ連合)や2010年のサッカーW杯で注目を集めたアフリカスポーツの最新動向にも触れられており、みんなのスポーツの世界的な流れを概観することもできます。

さらに、巻末には「フランスのスポーツ政策とスポーツ運動—断絶と連続—」と題した略年表(国内外のスポーツ運動、政治・経済・文化・風俗など多岐にわたっている)も付録されており、本文と見比べることで全体像を整理して理解するのに役立つ構成となっています。

最後に、日仏の架け橋のもうひとつの動きとして、本書刊行後の出来事でありますが、3月11日の大地震・津波・原発により被災された方々に向けて、FSGTは3月25日、26日、27日にボルドーで開催される総会の場で、日本と新日本スポーツ連盟に向けて連帯のアピールと募金活動を行なうことを大地震直後に発表したことを付記しておきたいと思います。(長井健治)

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